久保建英はスペインで躍動も…。10代選手不遇のJリーグ、しかし…降格なしが後押しする好影響【英国人の視点】

他国のリーグに比べ、Jリーグは若い選手がチャンスを得ることが難しいと言われている。しかし、再開から3週間が経過した今季は、まだ実績のない10代の選手の起用が目立っている。若い選手の抜擢の追い風となる背景や、彼らが今まさに得ている経験の価値について考える。(文:ショーン・キャロル)

2020年07月18日(Sat)10時00分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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10代の選手がほとんどプレーしないJリーグ

久保建英
【写真:Getty Images】

 2020シーズンの再開を前にJリーグの名鑑に目を通していると、ある残念な事実に気付かされた。J1のトップチームでプレーしている10代選手がほとんどいないということだ。

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 若いと思っていた選手に目を留めて誕生日を確認してみるたびに、彼らがすでに20代の選手であることに驚かされる。上田綺世は8月で22歳になるし、旗手怜央はすでに22歳。相馬勇紀は23歳、柴戸海は24歳。セレッソ大阪の坂元達裕や柏レイソルの戸嶋祥郎なども、良い若手選手を補強したと思っていたが、それぞれ23歳と24歳で五輪出場資格すらない世代だった。

 こういった選手たちはそれぞれのプロキャリアをまだスタートさせたばかりであり、将来に向けた有望な才能だと見なされている。だが海外であればほぼどの国に行っても、すでに所属チームの主力メンバーとして定着しているはずの年齢だ。

 もちろん各チームに1人や2人の10代選手は在籍している。だがTVコメンテーターが大好きな“高卒ルーキー”たちは、クラブ加入から1年目や2年目はリーグ戦でピッチに立つどころか試合のメンバー入りすることも滅多にない。準備ができたと考えられる時を待つことを求められ、それまでにJ2チームへの期限付き移籍を一度や二度経験したり、U-23チームで修行を積んだりすることにもなるだろう。

バルセロナやレアルでさえ…

 そのこと自体は日本独特の慣習というわけではない。若手選手にサッカーの実戦経験を積ませ、トップチームでプレーする準備を整えさせるため、世界中あらゆる国のクラブが長年にわたってローン制度を活用してきた。

 例えばデイビッド・ベッカムも1994/95シーズンに4部のプレストン・ノースエンドで短いレンタル期間を過ごしたし、ハリー・ケインも2011年から2013年にかけてレイトン・オリエント、ミルウォール、ノリッジ・シティ、レスター・シティへのレンタルを経て最終的にトッテナム・ホットスパーとイングランド代表のエースストライカーとして名を成した。

 だがその一方で欧州のクラブでは、10代の選手がすぐにトップチームで起用される例も数多く存在する。

 マンチェスター・ユナイテッドの前線で現在プレーしている3人がまさにその好例だ。メイソン・グリーンウッドは18歳にしてすでにオレ・グンナー・スールシャール監督のチームに定着し、コンスタントにゴールネットを揺らし続けている。パートナーを組むマーカス・ラッシュフォードとアントニー・マルシャルはそれぞれ22歳と24歳だが、どちらもプレミアリーグですでに5年目のシーズンを終えようとしており、2人で合計100ゴール近くを生み出してきた。

 久保建英のことを考えてみてもいいだろう。18歳になり次第スペインへ戻る意志を固めていた久保は現在マジョルカでレギュラーとしてプレーし、結果を残している。同じリーグではバルセロナや、久保の保有元クラブであるレアル・マドリードでさえも、アンス・ファティやヴィニシウス・ジュニオールのような選手たちに頻繁にチャンスを与えることを躊躇いはしない。

10代の起用を躊躇する理由

 もちろん彼らはトップレベルのエリートプレイヤーたちではあるが、そこは相対的に考えるべきだ。世界屈指のビッグクラブですらトップチームでチャンスを与えているのに、なぜ日本の10代選手はJリーグのクラブで同じようにチャンスを得られないのだろうか。

 高校サッカーと大学サッカーの制度の存在が大きなハードルとなっている部分ももちろんある。欧州や南米の選手たちの多くが非常に早い年齢から、場合によっては早すぎるとも言うべき年齢から各クラブの下部組織でプレーしている一方で、日本では18歳または22歳で学校を卒業するまで本格的にプロチームの一員にはならない選手も多い。

 その結果として、世界の他国ならすでにトップチームに馴染んでピッチに足を踏み入れているような年齢まで、本格的なプロレベルのサッカーに触れることがない。さらに“先輩・後輩”の文化もひとつの障壁となり、監督によっては、意識的であれ無意識的であれ、新加入選手を以前からチームにいる選手たちより優先的に起用することに二の足を踏む場合もある。

 だが新型コロナウイルスの影響により2020シーズンの全日程を6ヶ月間で強行しなければならない状況となったことで、監督たちには柔軟さが求められ、今季はこれまで以上にメンバーをフル活用することが必要となってくる。7月初旬のJ1リーグ再開直後から、その点でポジティブな兆候も見て取ることができる。

 例えばベガルタ仙台と清水エスパルスはそれぞれ、リーグ再開から10代GKの小畑裕馬と梅田透吾を起用している。本来のファーストチョイスであるヤクブ・スウォビィクとネト・ヴォルピの負傷による影響も部分もあったとはいえ、経験豊富な関憲太郎や大久保択生をベンチに残して若手にチャンスを与えた木山隆之監督とピーター・クラモフスキー監督に賛辞を送りたい。

「降格なし」が追い風に

 今年は降格がないという事実も、監督の思考にある程度影響している部分があるかもしれない。もちろんどのチームも試合に負けたいと思ってはいないが、具体的なリスクなく、成長中のタレントにトップチームでの出場時間を与えられるまたとないチャンスであることには誰もが気が付いているだろう。年間を通して先発イレブン内やその周辺で過ごした経験は、今後数年間で本格的にレギュラーの座を掴もうとするときに計り知れない価値を持つことになる。

 他にもいくつかのクラブが、法的にはまだビールを楽しむこともできない年齢の選手たちにチャンスを与えている。鹿島アントラーズの攻撃陣では染野唯月が自信と勢いを感じさせるプレーを見せ、7月4日の川崎フロンターレ戦ではデビュー戦での初ゴールにあと一歩まで迫った。横浜FCで高評価を受ける斉藤光毅もスムーズにJ1の舞台へと上がり、アウェイで柏レイソルを下した7月8日の試合では、これからトップリーグで数多く重ねていくであろうゴールの最初の1点を堂々と叩き込んだ。

 様々な要因の複合により、今年はこういった若手選手たちにチャンスが与えられている。彼らがこのレベルで戦える力を見せ続けることができれば、より多くの選手たちにステップアップへの自信を与え、より多くのチームが早い段階から頻繁にトップチームの扉を開くことへと繋がっていくだろう。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

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