バルセロナの新監督候補に急浮上。ローラン・ブランってどんな人? 戦術スタイルなどを解説

今季のラ・リーガ制覇を逃したバルセロナは、キケ・セティエン監督を解任するのではないかという報道が出ている。そんな同チームの新監督候補に浮上しているのが、ローラン・ブラン氏である。過去にフランス代表やパリ・サンジェルマンを指揮した男は一体どんな監督なのか。現地記者がレポートする。(文:小川由紀子【フランス】)

2020年07月26日(Sun)9時00分配信

text by 小川由紀子 photo Getty Images,Yukiko Ogawa
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バルサの新監督候補、ブランとは?

ローラン・ブラン
【写真:小川由紀子】

 来季のバルセロナの監督候補に、元フランス代表DFローラン・ブランの名前が挙がっているという。

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 ブランは1998年のワールドカップに優勝したフランス代表の中心メンバーであり、37歳で現役を引退した後は指導者に転身。初めてトップチームを率いたリーグ・アンのボルドーで、監督2年目にしてリーグ&リーグカップのダブル優勝を成し遂げた。

 その功績を買われて、レイモン・ドメネク監督の後任としてフランス代表監督に抜擢。前任者が率いた2010年の南アフリカW杯では、選手がトレーニングをボイコットするなどトラブル続きで0勝で敗退と、フランス代表は世界中に恥をさらす形になった。国民的ヒーローであるブランを後任に据えるという人事には、レ・ブルーの人気と信頼を回復したい、という思いがこめられていたのだ。

 準々決勝のスペイン戦で敗退した2012年のEURO(欧州選手権)を最後に代表監督のバトンを同僚のディディエ・デシャンに渡すと、2013/14シーズンからは3年間、パリ・サンジェルマン(PSG)を率いた。

 初年度はリーグとリーグカップの2冠、続く2シーズン目はフランス杯も合わせた3冠を達成。チャンピオンズリーグ(CL)では3シーズンともベスト8止まりだったが、カタール時代のPSGではこれまでベスト8が最高位であるから、ブラン時代の3年間は、PSGが国内最強クラブとしてのポジションを確固たるものにした時期だともいえる。

 契約を1年残して辞任したあとは、たまにチャリティイベントに顔を出す以外は表舞台には立っておらず、ボルドーの近くで家族との時間を楽しんでいた。しかし、そろそろ現場が恋しくなっていたようで、昨年10月、リヨンがブラジル人監督シルビーニョを更迭した時には後任候補に彼の名前が挙がった。

 そして今年の5月ごろ、クリスティアーノ・ロナウドやジョゼ・モウリーニョらを顧客にもつ業界きっての辣腕エージェント、ジョルジュ・メンデス氏と接触しているという報道を目にした。今回のバルセロナとのリンクも、メンデス氏絡みなのだろう。

「理想はバルセロナ」と公言

 これまでボルドー、フランス代表、PSGで見せてきたローラン・ブラン監督の指揮官としての手腕はどのようなものだったのか。

 監督には、自ら練習プランを講じて準備段階からすべてを仕切るタイプと、それらはアシスタントに任せ、本人は主に試合でのメンバー選考や采配を行うタイプがいるが、ブランは完全な後者だ。

 トレーニング場では、彼は腕を組んで静かに見守っていて、テキパキと取り仕切るのはアシスタントだった。ボルドーからPSGまで、彼の懐刀だったのはジャン・ルイ・ガセット。ブランがモンペリエでプロデビューした時の先輩だった。その後ガセットも正監督になり、昨シーズン、サンテティエンヌを率いたのを最後に現場から退いた。

 前述の、リヨンの監督の話がブランに決まらなかったのは、側近のガセットが引退を覆さなかったためだとも言われた(ガセットは「それはブランに対して失礼だ」と反論したが)。バルセロナに赴くことになったら、ブランは、酒井宏樹がマルセイユに入団した当時の監督だったフランク・パシをアシスタントとして伴うだろうと言われている。

 戦術的にはポゼッション重視で、「理想はバルセロナ」と常々公言している。

「フットボールというゲームにおいては、ボールを保持するということは、たとえそれが勝利を保証するものでないとしても、可能性を確実に上げることができるというのが私の信条だ。もちろん、相手チームがより攻撃面で優れている場合にはディフェンスも必要だが、ボールさえこちらの手にあれば、我々がゲームを主導し、その間、相手を守る側にすることができる」。2014年に本サイトに掲載したインタビューで、彼はそう語っている。

 PSGでは、着任当初は、前任者カルロ・アンチェロッティが定着させた4-4-2を引き継いだが、ほどなくして中盤が逆三角形の4-3-3にスイッチした。

 ズラタン・イブラヒモビッチを1トップに据えることで、フィニッシャーを自認するエディンソン・カバーニにはサイドで我慢してもらう形になったが、「優秀なプレイヤー同士は、常に共存できるものだ。彼らは、どのようにプレーすればいいか、という答えを自分で見つけ出すことができるからだ」と、そのシステムを貫いた。

 試合中の采配に関しては、ボルドー時代は、なかなかの手腕を見せていた印象がある。試合後半の山場で2人同時交代、という作戦をよく使ったのだが、これが効果的だった。

スター選手の扱いが苦手?

 スター選手の扱いが苦手なのでは、という指摘もある。となるとバルセロナで大丈夫かという疑念も湧くが、たしかにこれまで率いたチームでは、ヨアン・グルキュフら成長株の若手が集まっていたボルドーが一番はまっていた印象はある。

 フランス代表では、サミール・ナスリら一部の選手の素行の悪さがメディアから批判され、PSGでは、セルジュ・オーリエがSNSに流出させたビデオの中で、「ブランはイブラの言いなりだ」(というのをここでは書けない表現で)あざ笑うシーンがあった。

 インタビューの最中、たまたまイブラが通りかかり、あいさつを交わす2人の様子を見たときは、そのような上下関係があるようには見えなかったが、たしかにプレー上では「イブラ偏重か?」と思える采配がなかったわけではない。

 ただ、あの頃のイブラはとにかく影響力絶大だった。そのためにカバーニやハビエル・パストーレなど、本来の持ち場で思い切り力を発揮する機会を奪われていた選手もいたが、そういった犠牲を含めても、全体的にはイブラ中心のチームに勝機があるという判断であり、成績を見る限りそれは正しかった。

 とくに2015/16シーズンのPSGの強さはぶっちぎりで、勝ち点96、得失点差83はともにクラブの歴代記録だ。ちなみにイブラ個人では、全コンペティション合わせて50点をマークしている。

 ブランはまた、「コンディションが良い状態であるなら、先発のイレブンは同じメンバーで固定する」と、もともとローテーションを好むタイプでないことも明言している。

「試合に勝てる監督、それがベストな監督だと私は思う」

ローラン・ブラン
ブラン氏は「試合に勝つ監督。どんな方法であってもね。それが私にとっての理想の監督だ」と話す【写真:Getty Images】

 スペイン発の報道によれば、次期会長選に出馬しているビクトール・フォント氏は、現在カタールリーグのアル・サッドで指揮をとるクラブのレジェンド、シャビを監督に据えたい意向があるとのことで、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長が任期を終える来季に、フロントが一新するタイミングでシャビを招聘。それまでの1年間を任せられる人材を求めているということらしい。

 たとえ1シーズンでも、選手としても1年間プレーし、そのスタイルを敬愛するバルセロナを率いるというのは、ブランにとっては魅力的な機会だろう。好投すれば、契約が伸びる可能性だってなくはない。

 ただ、シャビが来季着任できる可能性もゼロではなく、今年1月にもエルネスト・バルベルデの後任に名前が挙がったロナルド・クーマンや、同じくバルサOBのパトリック・クライファートもリストアップされているという報道もある。クーマンは現在オランダ代表監督で、2020年のEUROのあとバルセロナへ、というシナリオもあったようだが、今年のEUROは新型コロナウイルスの影響で来年に延期となったから、また事態がややこしくなった。

 ということでブランは候補リストの筆頭ではないようだが、PSGのときも、彼は4番手の候補だった。

 もしブランが就任すれば、スペイン語を母国語としない監督は、2003年から2008年まで率いたオランダ人のフランク・ライカールト以来だ。プレッシャーも相当だろうが、「監督という職業を選ぶ時点で、そういったプレッシャーにさらされることを好む人種だということ」と、彼は豪快に言い切っていた。

 そういえば現役時代の彼は、「大統領」と言われていた。鷹揚としていて、ちょっとやそっとじゃ動じないタイプということだろう。

 手元にある選手の能力を引き出し、その中でベストな戦術を組み立てる、あるいは自分が理想とする戦術を選手たちに植え付ける、彼にとって理想的な監督像はどちらか? と尋ねると、ブランはこう答えた。

「試合に勝つ監督。どんな方法であってもね。それが私にとっての理想の監督だ。2つのどちらも、極言すれば正しい。しかし監督業は常にプレッシャーと隣り合わせだ。好きなだけ時間がかけられるなら、色々なことができるだろう。でもそんな時間は与えてはもらえない。ならば、どんな方法であっても、とにかく試合に勝てる監督、それがベストな監督だと私は思う」。

 ブランは来季、カンプノウのベンチに陣取ることになるのか。続報を待ちたい。

(文:小川由紀子【フランス】)

【了】

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