浦和レッズ、レオナルドの危険性は分かっていても…。止めるのは至難の業、その理由とは?【週刊J批評】

今季から浦和レッズに加入したレオナルドは、8月29日の明治安田生命J1リーグ第13節、大分トリニータ戦で1点を奪い、リーグ戦得点数を「9」に伸ばした。3季連続の得点王獲得に向け視界は良好と言えるが、なぜブラジル人ストライカーはここまでゴールネットを揺らすことができるのか。(取材・文:河治良幸)

2020年09月01日(Tue)11時00分配信

シリーズ:週刊J批評
text by 河治良幸 photo Getty Images
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3季連続の得点王へ

レオナルド
【写真:Getty Images】

 2018年のガイナーレ鳥取でJ3、昨年はアルビレックス新潟でJ2の得点王に輝き、J1の浦和レッズに加入したレオナルド。本人も個人の目標として掲げる、3つのカテゴリーを跨いでの3年連続得点王という前人未到の記録に向けて、着々と得点数を伸ばして来ている。

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 現在は昨シーズンのJ2でも得点王を争ったオルンガが13試合14得点と超ハイペースでゴールを積み重ねているが、今シーズンから加入した浦和で周囲との連係イメージを築きながらの結果としては上々であり、十分に得点王の射程圏内にいると言える。

 そのレオナルドの得点力を明確に示すのが、得点数をシュート数で割ったシュート決定率だ。12試合のリーグ戦で27本のシュート、9得点を記録しており、決定率は33.3%となる。うちPKの得点が二つ含まれているものの、驚異的な決定力と言える。

 レオナルドの高い決定力を可能にしているのはシュート力、狙いの精度もさることながら、狭いスペースでも落ち着いて、冷静な判断ができること、その前提となる駆け引きのうまさが良い形でのフィニッシュにつながっている。

ロマーリオのプレーを参考に

 8月29日に行われた第13節の大分トリニータ戦で9得点目をあげた。そのゴールにいたる動き出しにはレオナルドのストライカーとしてのセンスが凝縮されている。一度右サイドからチャンスを作りに行こうとして、大分のディフェンスに跳ね返された浦和はセカンドボールからボランチのエヴェルトンが組み立て直す。

 エヴェルトンから高い位置でパスを受けた左センターバックの槙野智章が縦にくさびのパスを入れると、2トップの一人である興梠慎三が手前に引きながらボールを受けて、右斜め前のレオナルドにパス。レオナルドは3バック中央の鈴木義宜を背負いながら、右サイドハーフのポジションから右横に出て来た長澤和輝にボールを預けた。

 その長澤に対して、3バック左の三竿雄斗と左ウィングバックの香川勇気が食い付いたことで、大分のバックラインに段差が生じた。この段差をレオナルドはうまく利用してゴールにつなげる。

 レオナルドからパスを受けた長澤は二人のチェックにあいながらもタイミングよく右外に展開。そこでボールを受けたのは東京五輪候補の右サイドバック橋岡大樹だ。直前の組み立てで高めの位置に上がっていたが、一連の流れで大分の左ウィングバックである香川が長澤に引っ張られたことによりサイドスペースでフリーになっていた。

「僕自身は狙っているところに蹴れていることもあるので、そこに入ってくれれば。今日はレオナルド選手が入ってくれた」。

 そう振り返る橋岡のクロスにレオナルドがドンピシャで合わせて、GKムン・キョンゴンに触られながらも勢いでボールがゴールラインを割った。ここで注目したいのが、なぜレオナルドが橋岡のクロスに合わせることができたのか。

 長澤から橋岡にワイドのパスが展開された瞬間、レオナルドは長澤が作った段差、つまり3バック中央の鈴木と前に出て長澤をチェックした三竿のギャップに入る動きをした。ここに鈴木の視線が引き付けられるが、レオナルドは橋岡の方に視線を確保したまま素早いバックステップで鈴木の背後に回り込んだ。

 その動きと橋岡のクロスボールが完璧なシンクロでレオナルドのヘッドに合わせられるのだが、この状況をアシストした選手がもう一人いる。クサビのプレーで起点になっていた興梠だ。興梠はそこからタイミングを見極めてゴール前のファーサイドに走り込む。その結果、3バック右の岩田智輝は興梠にインを遮られ、外側からレオナルドに詰め寄ることができなかった。

 こうした狭い空間の中でも一瞬生じる隙を逃さず、しかも冷静に利用するフィニッシュワークはブラジル人のストライカー特有のものだが、レオナルドの場合は往年の元ブラジル代表FWロマーリオのプレーをよく観て参考にしていたということで、少年時代から目を養い、体に染み込ませていたということになる。これまでJリーグでプレーした選手で言うとシャペコエンセの飛行機事故で亡くなったケンペスにすごく似ている。

危険性はさらに増していく

 筆者が担当した『フットボール批評issue28』のインタビューにおいてレオナルドは「僕はディフェンダーと並走して競るというより、ディフェンダーのミスも予測しながら少し引いて、マイナスのボールを狙ったりもしています」と語りながら「ディフェンダーが引いた僕に付いて来られるようになったら、この記事のせいだと思うようになります(笑) 」と冗談まじりに付け加えていた。

 しかし、実際に大分戦のゴールを見ても、相手ディフェンスがレオナルドのそうした危険性を事前に分かっていても、展開の流れからレオナルドが描いたビジョンを察知し、一瞬の動き出しに釣られることなく完璧に対応することは至難のわざだと言うことが見て取れる。

 もう1つレオナルドの特徴を明確に示すシーンがあった。5-4-1のブロックで守る大分に対して浦和はバックラインを上げながらボールをつなぐ。ボランチのエヴェルトンがボールを持った時、レオナルドは3バック中央の鈴木を背負っていた。ここでエヴェルトンはレオナルドより右手前にポジションを取っていた長澤に出そうとする。

 その長澤に3バック左の三竿が前に出てチェックしようとした瞬間、二人のブラジル人選手が完璧に息を合わるように、エヴェルトンのスルーパスにレオナルドが反応した。鈴木と三竿の間を抜けるボールに向けて動き出すレオナルドを鈴木がなんとか抑えにかかるが、レオナルドはファウルすれすれのチャージにもバランスを崩すことなくノートラップで右足を振り抜くが、シュートはゴール右ポストに嫌われた。

 大分がオーガナイズされたブロックを形成する中で、エヴェルトン、長澤、レオナルドの動きが完璧にハマる形で、ほんの少しのスペースやギャップ、心理的な隙を逃さずゴールに結び付けようとする抜け目なさは相手にとって危険でしかない。オルンガのようなダイナミックさがある訳ではないが、研ぎ澄まされたビジョンと技術、駆け引きの妙で決定的なシーンを作り出し、正確なフィニッシュでゴールを仕留めるレオナルド。

 周囲とのビジョンがさらに高まることで、その危険性は増して行きそうだ。

(取材・文:河治良幸)

【了】

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