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セリエA 4年前

インテル、質・量ともに充実のA評価補強。ハキミは大当たり、打倒ユベントスへ強力な陣容整う【欧州主要クラブ補強診断(10)】

欧州の2020/21シーズンが開幕し、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、各国の主要クラブはそれぞれどんな動きを見せたのだろうか。今回は昨季のセリエAを2位で終えたインテルの補強動向を読み解く。

シリーズ:20/21欧州主要クラブ補強診断 text by 編集部 photo by Getty Images

低コストで成果の大きな補強に成功

インテル
【写真:Getty Images】

 打倒王者、ユベントスの10連覇阻止に最も近いのは、インテルだろう。昨季は最終的に1ポイント差まで肉薄した。

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 今季こそはタイトル獲得! という意気込みは、夏の補強からもうかがえる。予算が限られる中でも主力級の選手を複数確保し、選手層の厚みが増した。絶対王者にスカッドの充実度で肩を並べることができるセリエAのクラブは、おそらくインテルだけだ。

 メインのシステムは昨季確立された3-4-1-2を引き続き採用している。戦術のキーマンとなるウィングバック、特に右サイドには新たなエンジンが装備された。レアル・マドリードから獲得したアクラフ・ハキミである。

 昨季はレンタル先のボルシア・ドルトムントで右ウィングバックとして大きく飛躍したが、守備面で周りとの連係に課題があり、4バックのサイドバックを苦手としている。そのためマドリーに居場所はなく、インテルへと新天地を求めた。

 コンテ監督の3-4-1-2においてウィングバックは90分間絶えず上下動し続ける運動量と、攻撃面でのクオリティが求められる。その意味で、推進力に優れ、スピードもあり、豪快な攻め上がりからのクロスやシュートを得意とするハキミはチームの大きな武器になるだろう。今季はセリエAで4試合に出場して1得点2アシストと、すでに主力に定着して違いを生み出している。

 中盤にハードワークとファイティングスピリットを注入できるアルトゥーロ・ビダルや、両ウィングバックのバックアッパーとして信頼の置けるマッテオ・ダルミアンも加入した。ベテランのアレクサンダル・コラロフは、おそらく3バックの左でアレッサンドロ・バストーニの控えを務めることになるが、有事には左ウィングバック起用も考えられる。

 バイエルン・ミュンヘンで欧州王者になって帰還したイヴァン・ペリシッチは、左ウィングバックに定着しそうだ。コンテ監督が就任した昨季は失格の烙印を押されたが、高精度の両足と献身性、抜群のゴール嗅覚などをバイエルンで改めて証明し、たくましくなって戻ってきた。

 彼ら新戦力と既存の選手たちの融合が進めば、スクデット争いに絡んでくるのは間違いない。昨季23得点のロメル・ルカクと同14得点のラウタロ・マルティネスが組む強力2トップは健在で、今季も彼らが軸になる。

 機動力とクオリティを兼ね備えたニコロ・バレッラや、多様な役割をこなせるテクニシャンのステファノ・センシ、卓越したビジョンと高度な技術を持つクリスティアン・エリクセン、豊富な運動量と的確なパスワークで中盤を引き締めるマルセロ・ブロゾヴィッチ。このように特にMFの人材は豊富で、ロベルト・ガリアルディーニやビダル、ラジャ・ナインゴランなども絡めば組み合わせの多彩さと質の高さを常にキープできるはずだ。

 戦術的な部分のベースはすでに確立されていて、必要な戦力も揃った。ユベントスの絶対王政を打破し、スクデット奪還を果たす準備は整っている。

補強・総合力評価

インテル
インテルの20/21シーズン予想布陣(黄色は新加入選手)

IN
GK:ヨヌーツ・ラドゥ(パルマ/期限付き移籍から復帰)
GK:フィリップ・スタンコヴィッチ(インテルU-19/昇格)
DF:アレクサンダル・コラロフ(ローマ)
DF:マッテオ・ダルミアン(パルマ/期限付き移籍)
MF:アルトゥーロ・ビダル(バルセロナ)
MF:アクラフ・ハキミ(ボルシア・ドルトムント/期限付き移籍期間満了→レアル・マドリード)
MF:ラジャ・ナインゴラン(カリアリ/期限付き移籍から復帰)
FW:アンドレア・ピナモンティ(ジェノア)
FW:イヴァン・ペリシッチ(バイエルン・ミュンヘン/期限付き移籍から復帰)

OUT
GK:トンマーゾ・ベルニ(未定)
DF:ディエゴ・ゴディン(カリアリ)
DF:ロレンツォ・ピロラ(モンツァ/期限付き移籍)
DF:クリスティアーノ・ビラーギ(フィオレンティーナ/期限付き移籍期間満了)
DF:ダウベルト(フィオレンティーナ/期限付き移籍期間満了→スタッド・レンヌ/期限付き移籍)
MF:ボルハ・バレーロ(フィオレンティーナ)
MF:クワドォ・アサモア(未定)
MF:アントニオ・カンドレーバ(サンプドリア/期限付き移籍)
MF:ルシアン・アグメ(スペツィア/期限付き移籍)
MF:ヴィクター・モーゼス(チェルシー/期限付き移籍期間満了)
MF:ジョアン・マリオ(ロコモティフ・モスクワ/期限付き移籍期間満了→スポルティングCP/期限付き移籍)
MF:ロレンツォ・タッシ(アレッツォ/期限付き移籍から復帰→未定)
FW:セバスティアーノ・エスポージト(SPAL/期限付き移籍)
FW:エディー・サルセード(ジェノア/期限付き移籍期間満了→エラス・ヴェローナ/期限付き移籍)
FW:ダリアン・メイルズ(ルツェルン→ジェノア/期限付き移籍)
FW:ヴィンチェンツォ・トンマゾーネ(カルピ/期限付き移籍から復帰→未定)

補強評価:A

 コストを抑えながら必要な戦力を獲得することができた。各ポジションに軸となる選手と、それを支える選手がしっかりと揃い、充実のスカッドが完成。コンテ監督のリクエスト通りの補強に成功したと言えるだろう。唯一不安があるとすれば、3バックを形成するにあたって、センターバックを本職とする選手がアンドレア・ラノッキアを含めて4人しかいないことか。

総合力評価:B

 ユベントスほど潤沢ではないが、タイトル争いには十分な実力がある。コンテ監督の仕込んだ3-4-1-2は非常に洗練されていて、誰もがハードワークを怠らない。やや年齢層が高めではあるものの、要所でベテランたちの経験値も生かされるはず。あとはルカクとラウタロの2トップが健康であり続けることを祈るばかりだ。

【了】

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