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前回の屈辱的敗戦を経て…マンUが見せた別の顔。無得点でも世界屈指、カバーニが示した質【CL分析コラム】

チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグH組第4節、マンチェスター・ユナイテッド対イスタンブール・バシャクシェヒルが現地時間24日に行われ、4-1でホームチームが勝利している。前回対戦時は1-2で敗れたユナイテッドだが、この試合ではまったく違った姿をみせ決勝トーナメント行きを近づけた。その中で躍動したのは、この日が移籍後初スタメンだったエディンソン・カバーニだ。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

目次

前回対戦時とは違った姿
無得点でも際立つカバーニの質

前回対戦時とは違った姿

マンチェスター・ユナイテッド
【写真:Getty Images】

 マンチェスター・ユナイテッドは今月上旬に行われたイスタンブール・バシャクシェヒルとの第1戦で、1-2と敗北。あまりに軽率な失点を許したことはもちろん、結果もついてこなかったことでチームには多くの批判が集まっていた。

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 その試合から約3週間が経過し、ユナイテッドは再びトルコ王者と顔を合わせることになった。当然、両者ともに前回対戦時から監督も選手も大きくは変わっていない。しかし、ユナイテッドはあの屈辱的な敗戦を喫した3週間前とは、まったく別のチームになっていた。

 オールド・トラフォードに乗り込んできたバシャクシェヒルに対し、ユナイテッドは立ち上がりから深い位置へ押し込んだ。前回対戦時は相手の守備ブロックにかなり手を焼いたが、今回は違う。攻撃に停滞感というものはなく、わずか数分の中で得点の可能性というものを示し続けていた。

 そして、7分にブルーノ・フェルナンデスがスーパーミドルを突き刺して1点をリード。まさに完璧なゲームへの入りだった。敵地で勝ち点1獲得でも満足だったはずのバシャクシェヒルからすると、痛恨の失点である。

 オカン・ブルク監督率いるトルコ王者はその後、攻撃時に中盤を飛ばし最前線のデンバ・バ目がけて長いボールを蹴り込む形が多くみられた。手数をかけず、スピーディーな流れのまま崩し切ろうという狙いだろう。しかし、ハリー・マグワイアを中心とした守備陣はことごとくそれらを跳ね返す。そして、中盤のフレッジとドニー・ファン・デ・ベークがセカンドボールを着実に回収。バシャクシェヒル側が前掛かりになろうとしたところを、逆に襲うことができた。

 こうしてペースを完全掌握したユナイテッドは19分に再びB・フェルナンデス、36分にマーカス・ラッシュフォードがPKを沈めて前半のうちに3-0と大量リード。この時点で勝負を決定づけた。

「3-0で勝っている時にテンポを保つのは難しい」。

 試合後にオーレ・グンナー・スールシャール監督が話した通り、後半、とくに59分の3枚替え以降はペースがバシャクシェヒルへと傾いた。B・フェルナンデスがベンチに下がったことで、攻撃のクオリティーも下がってしまったのだ。

 しかし、ユナイテッドは前半で3-0とリードしていたこともあり、大きな焦りをみせることはなかった。75分にデニズ・トゥリュクに直接フリーキックを叩き込まれたが、82分にネマニャ・マティッチを投入してより守備強度を高めると、後半ATにカウンターから追加点をゲット。結果的に4-1とし、バシャクシェヒル相手にリベンジを果たした。

 ユナイテッドはこれで勝ち点を9に伸ばし首位をキープ。残り2試合はパリ・サンジェルマンとRBライプツィヒという曲者で、スールシャール監督も「グループはまだ非常にオープン」と話すが、決勝トーナメント行きは近いと言えるだろう。解任、解任と言われながらもなんだかんだ結果を残すノルウェー人指揮官は、色々な意味でさすがといったところか。

無得点でも際立つカバーニの質

エディンソン・カバーニ
【写真:Getty Images】

 スールシャール監督はバシャクシェヒル戦後「非常に好調だった」と二人の選手の名を挙げた。それが、ドニー・ファン・デ・ベークとエディンソン・カバーニ。ともに今季よりユナイテッドに所属する新戦力だ。

 とくに目立っていたのはウルグアイが生んだ世界屈指のストライカーであるカバーニだ。同選手はこのバシャクシェヒル戦がユナイテッド移籍後初スタメンであったが、これまで数々の舞台で輝きを放ってきたその実力をさっそく証明していた。

 4-1-4-1で守るバシャクシェヒルは、アンカーのベルカイ・オズジャンをユナイテッドのトップ下B・フェルナンデスに張り付ける形で自由を奪っていた。そんな中、ポルトガル代表MFは幅広いエリアに動いてはオズジャンを引き連れる。そうすることで、味方に相手の最終ラインと中盤のスペースを供給していたのだ。

 その背番号18の動きに対し素早く反応したのがカバーニだ。相手のギャップに幾度となく侵入し、高度な足下の技術を駆使してボールを収めては冷静かつ的確にパスを散らし、攻撃のリズムを生み出した。それまで1トップを務めていたアントニー・マルシャルよりもプレーがシンプルで、一つひとつに無駄がないためスムーズな流れが出来ていた。

 そして、カバーニはよく走る。攻守の切り替えが素早く必要とあればどこまでもボールホルダーを追い、味方が深くへ侵入すれば誰よりもスプリントしてボックス内に「量」をもたらす。常に意識も高く保っていた。

 もちろん、ただランニングするだけではない。その質も秀逸だ。

 たとえば2点目を生んだシーンでは、左サイドのアレックス・テレスにボールが渡った瞬間ギアを上げ、最も対応されにくい相手DF二人の間へ侵入してクロスを呼び込む。A・テレスが上げたボールはカバーニに届かなかったが、結果的にジャンプしたカバーニがブラインドとなってGKメルト・ギュノクのミスを誘発。B・フェルナンデスが得点を奪うことに成功している。

 また、驚きだったのは後半ATだ。カバーニのポストプレーが効いてカウンターが発動。メイソン・グリーンウッドが右サイドを独走し、最後はファーサイドでフリーとなっていたダニエル・ジェームズに得点が生まれたシーンである。

 グリーンウッドが右サイドを独走した時点でほぼ勝負はあった。D・ジェームズもしっかり左サイドを上がっており相手の前に入っていたため、実質2対1の状況だったからだ。それでも、カバーニはハーフウェーライン付近から猛ダッシュでゴール前に侵入。他の選手であればそこまで力を振り絞らない場面、それも疲労の溜まる後半ATにもかかわらずだ。どんな状況でもゴール前に走る。これが、彼が世界屈指のストライカーである所以なのかもしれない。

 カバーニはこの日、チーム内3番目となる走行距離10.79kmを記録していた。最終的に得点を奪うことはなかったが、そうした結果以外すべての部分では十分にそのクオリティーを発揮したと言える。

 ワールドクラスのストライカーであり、現在33歳というベテラン。そんな選手が、ここまで走る。ユナイテッドの他の選手がサボるわけにはいかない。カバーニの献身性が、チーム全体に活力を与えることになるだろう。

(文:小澤祐作)

【了】

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