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リバプール、南野拓実を大きく評価できない理由と気になるスタッツとは? ブライトン戦よりは良かったが…【CL分析コラム】

チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグD組第6節、FCミッティラン対リバプールが現地時間9日に行われ、1-1のドローに終わっている。日本代表の南野拓実は先発メンバーに名を連ね、フル出場を果たした。前回のブライトン戦では評価を落としたが、この日は躍動感あるプレーを披露している。それでも、大きく評価できない理由とは。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

前後半で別のチームに

リバプール
リバプールのミッティラン戦のスターティングメンバー

 すでに敗退が決まっているFCミッティランと決勝トーナメント行きが決まっているリバプール。両者にとって現地時間9日に行われたゲームは「消化試合」だった。しかし、お互いに勝ち点3への意欲は示していたようにも思う。

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 リバプールはこの試合でも4-3-3のフォーメーションを採用。モハメド・サラーやディオゴ・ジョッタらを先発で起用し、若いレイトン・クラークソンやリース・ウィリアムズも送り出す。そして、南野拓実もスタートメンバーに名を連ねていた。

 試合は開始わずか1分で動いた。相手のバックパスをサラーが拾うと、そのままスピードを生かしてゴール前へ。最後はDFに身体を寄せられながらもゴールへシュートを流し込んだ。

 その後も試合のペースはリバプールだった。ミッティランに対し高い位置からプレッシャーを与え、ボールを奪えば縦へ素早く展開する。最前線ディボック・オリギの存在感は相変わらず薄かったが、その分サラーとジョッタの両翼が効果的な動きで攻撃をグレードアップさせていた。

 しかし、試合後に「完全に異なる45分間だった。私は前半にプレーしたフットボールを好んだ。特に今夜はチームが大きく変わっていたからね」とユルゲン・クロップ監督が話した通り、後半はまったく別の展開となった。

 先述した通りミッティランは最下位でのグループリーグ敗退が確定している。言い方は悪いかもしれないが、この試合で負けても大して失うものはなかった。しかし、だからこそかもしれない。ミッティランはリバプールを恐れることなく、凄まじい勢いで1点を奪い返しに来た。

 リバプールはその波に飲み込まれた。最終ラインで獅子奮迅の活躍を見せていたファビーニョが下がり、後半からは若いビリー・クメティオが入ったのだが、彼は経験値という部分含めやはり物足りず、最終ラインのバランスは崩れた。そして、多くのチャンスを作られたのである。

 そして62分にPKを献上。これをアレクサンダー・ショルツに沈められ、同点に追いつかれてしまった。

 その後もペースはミッティラン。前半機能していたサラーやジョッタのフォアチェックは影を潜め、ただただ耐える時間帯が続いていた。

 クロップ監督は終盤にロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネの主力を投入したが、勝ち越し弾は遠かった。88分には南野がゴールネットを揺らしたが、直前にマネのハンドがあったとして取り消しに。結局、勝ち点1ずつを分け合う形に終わった。

 リバプールの前半のスタッツは支配率56%、シュート数7本、被シュート数5本となっていたが、後半は支配率44%、シュート数0本、被シュート数15本と圧倒的な差が出ている。これだけでも、後半がいかに一方的な展開だったかがわかるだろう。リバプールは勝ち点1で御の字、と言えるかもしれない。

南野拓実はレベルアップしていたが…

南野拓実
【写真:Getty Images】

 さて、冒頭でも記した通り、この試合では南野が先発メンバーに名を連ねていた。ポジションは3トップの一角ではなく、インサイドハーフだった。

 同ポジションでプレーするのは今季2回目だ。前回はプレミアリーグ第10節のブライトン戦だった。しかし、この時は無難なバックパスや横パスばかりで、攻撃面での存在感は皆無。守備ではよく走っていたが、デュエルでことごとく後手に回るなど、評価を落としかねないパフォーマンスに終始していた。

 このミッティラン戦は、そうしたネガティブな雰囲気を払拭できる絶好の機会だった。決して慣れているポジションでの起用とは言えないが、それでもとにかくクロップ監督を納得させるだけのプレーが南野には必要だったのである。

 そして、結果的に南野はこの試合でフル出場を果たした。その肝心のパフォーマンスだが、ブライトン戦よりは遥かに良かったように思う。

 目に見えて違ったのは攻撃時のアクションだ。ブライトン戦は中盤の位置にほぼ固定しており、無難なパス捌きに終始したが、この日は持ち味であるスペースやボックス内への飛び込みなど、躍動感があった。18分には右サイドでボールを引き出し、クロスを上げてジョッタのチャンスを演出。後半はチーム全体として攻撃が沈黙したが、終盤に取り消しにこそなったがゴールネットを揺らしている。決定機に絡む回数はブライトン戦より断然多かった。

 攻守の切り替えは相変わらず素早く、南野のプレスが効いて相手のプレーが遅れ、チームメイトが囲んでマイボールへというシーンもあった。とにかく運動量はあるので、「走る」という点においてはやはりチーム内でもトップレベルのものが。まさにエネルギッシュにプレーしていた。

「南野拓実はあのポジションでまだ2回目だったということを忘れてはいけない。1回目はブライトン戦だったが、全く別の試合だった」とクロップ監督も南野を評価している。目に見える結果は出なかったが、この試合で周囲を落胆させることはないだろう。

 しかし、大きく評価できないのもまた事実。今後を考えれば、やはり現状では物足りない。

 先述した通り南野は良く走るが、どうしてもフィジカル面の弱さが出てしまう。たとえば守備面ではせっかく素早く寄せても、プレーは制御できるがボールを奪うまでに至らないという場面が多い。もちろん、素早く寄せるということはかなり重要なのだが、やはり中盤でマイボールへと持ち込める方が存在感は出る。そういった意味で、南野はまだ物足りない。

 試合後のスタッツを見ても、南野はデュエル数12回のうち、勝利したのは4回という数字が出ている。前回のブライトン戦でも10回中、勝利1回という数字が出ていたが、やはりこのあたりの成績は気になるところ。とくにリバプール所属、それもインテンシティーの高いプレミアリーグでプレーするならば、単純な強さは装備したいところである。

 クロップ監督が話した通り、インサイドハーフ起用はまだ2回目ということを忘れてはならない。今後もプレータイムはどこかで訪れるだろう。しかし、このポジションはそもそも激戦区で、今後チアゴ・アルカンタラやアレックス・オックスレイド=チェンバレンらが戻ってくれば、彼らを南野が序列で上回ることは難しくなるはずだ。

 ミッティラン戦の南野は確かに悪くなかったが、あくまでもブライトン戦に比べればの話であり、やはりプレータイムを増やせるだけのインパクトを残せたとは言い難い。厳しい戦いは、当然ながらまだまだ続く。

(文:小澤祐作)

【了】

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