アーセナル自滅。屈辱のホーム4連敗でエメリ解任時を想起…ジャカの愚行が破滅への引き金に?【分析コラム】

現地13日にプレミアリーグ第12節が行われ、アーセナルはバーンリーに0-1で敗れた。グラニト・ジャカが愚かな暴力行為で退場処分を受け、キャプテンはオウンゴールで決勝点を献上。あまりに散々な敗戦に、不穏な空気を感じた。ミケル・アルテタ監督の時代は終焉に向かいつつあるのだろうか。(文:舩木渉)

2020年12月14日(Mon)13時11分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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ジャカの愚行が敗因に

グラニト・ジャカ
【写真:Getty Images】

 いよいよミケル・アルテタ監督の立場も怪しくなってきそうだ。

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 アーセナルは現地13日に行われたプレミアリーグ第12節でバーンリーに0-1で敗れた。グループリーグを全勝で突破したUEFAヨーロッパリーグ(EL)とは対照的に、国内リーグでは5試合勝利なし。ホームゲームに限れば4連敗という屈辱的な状況で、降格圏まで5ポイント差の15位に沈んでいる。

 歴史的な低迷を抜け出すきっかけは一体どこにあるのだろうか。13日に対戦したバーンリーは1試合消化が少ないとはいえ、アーセナル戦前の段階で1勝しか挙げていなかった。例年であれば勝って当然の試合だったのは間違いない。

 主導権を握っていたのはアーセナルだった。前半のボール支配率は67%、シュート数でもバーンリーの2本に対し8本とバーンリーを上回っていた。だが、リーグ最低クラスの貧打にあえぐ攻撃陣はこの日も不発。アレクサンドル・ラカゼットやピエール=エメリク・オーバメヤンはチャンスで決めきれず、相手の必死の守備にも苦しめられて得点を奪えなかった。

 すると後半、試合は1枚のカードによって大きく動く。接触プレーをきっかけにアーセナルのMFグラニト・ジャカが相手選手と衝突すると、しまいにはバーンリーのMFアシュリー・ウェストウッドの首をつかんで押し倒してした。

 主審はまずジャカにイエローカードを提示したが、VARの助言によって映像を確認して判定を変更。感情のコントロールを失って相手に手を出したスイス代表MFはレッドカードで一発退場となり、アーセナルは残り30分強を10人で戦うことになってしまった。

 さらなる不運にも見舞われた。数的不利になっても0-0のまま耐えていたアーセナルだったが、73分にコーナーキックからついにゴールを破られてしまう。ニアサイドで最後に触ったのはバーンリーの選手ではなく、守備に戻っていたエースFWオーバメヤンだった。

 中心選手の退場に加えてキャプテンのオウンゴールもあり、アーセナルは散った。できるだけ次につながるように振り返ろうと思っても、ポジティブな要素が全く見当たらない敗戦となってしまった。

表面化する不協和音

ミケル・アルテタ
【写真:Getty Images】

 トーマス・パーティをはじめ多くの負傷者を抱える苦しい状況でもあったが、格下のバーンリーにはしっかり勝っておきたいところだった。だが、終わってみれば自滅と言えるような結果である。

 引き金となったのは、ジャカの愚かな退場だろう。アルテタ監督は試合後のインタビューでしどろもどろだったが、一発退場の場面に関しては「バカげたレッドカードによって試合を自分たちから投げ捨ててしまった」と糾弾した。

 アーセナルは先月22日のリーズ戦でも退場者を出している。その時はニコラ・ぺぺがエズジャン・アリオスキに頭突きを見舞ってレッドカードを提示され、アルテタ監督は「容認できない」と非難していた。そして、ジャカにも「同じ言葉」が当てはまると語る。

 リーズ戦はスコアレスドローで、今回のバーンリー戦は敗れた。その間にアーセナルはリーグ戦で全敗。「試合に勝っておらず、(退場によって)状況はさらに悪くなった」と指揮官は肩を落とした。

 今のアーセナルには問題が多すぎる。アルテタ監督も選手たちもナーバスになっているように映り、正常な競争原理が働いていないのではないかとすら感じる。チームのために戦って、何としても勝とうという前向きなエネルギーをピッチ上で表現できている選手がどれだけいるだろうか。

 原因の1つはELとプレミアリーグの間に大きな溝を作ってしまっている点だ。毎週木曜日に組まれたELに若手中心のメンバーで挑んでいたアーセナルは、ひとまずグループステージを全勝で終えた。

 そこでは週末のリーグ戦で出番の少ない選手たちが数多く起用され、チームとしてだけでなく個人としても勝利に値する結果を残してきた。例えばジョー・ウィロックはELで5試合に出場して3得点3アシストを記録している。

 だが、ウィロックにリーグ戦でチャンスが与えられたのは11月末の2試合、わずかに147分間しかない。若手がELでアピールしても、可能性が広がらない状況ではチームにいい影響はない。

 他にも同様の状況に置かれている選手は多い。エミール・スミス=ロウはEL3試合の出場で1得点2アシストと、短時間で結果を残しながら今季のプレミアリーグ出場はなし。クラブが契約延長を望んで本人と粘り強く交渉しているというのに、ELの4試合で2得点と十分な結果を残しながらプレミアリーグで一度もベンチ入りすらさせてもらえないフォラリン・バログンという有望なFWもいる。

エメリ解任前に似ている?

グラニト・ジャカ
【写真:Getty Images】

 一方で全く結果が出ず低迷するなか、プレミアリーグで起用される選手たちの顔ぶれに大きな変化はない。より確実に浮上のきっかけをつかむために能力の高い主力選手たちを頼りたくなるのは理解できなくもないが、正常な競争原理が働いていなければ個々のポテンシャルを最大限に引き出すのは厳しい。

 むしろELで勢いに乗った若手がどんどん国内リーグ戦に抜てきされ、中堅やベテランの選手たちがそれに刺激を受けて発奮するような流れの方が健全だ。勝つために結果を出すというモチベーションは、チーム力にも反映されるだろう。

 主力選手たちは国内リーグ戦で結果が出ないことに悶々として不安定になる。アピールしても一向にチャンスの増えない若手選手たちは、結果を出していない主力選手たちと自分たちの扱いを比較して不満を募らせる。そして悪い流れはチーム全体に広がり、負の循環が生まれてはいないだろうか。

 アルテタ監督は就任当初、緻密に練り上げた戦術で選手たちの信頼をつかんだ。だが、今季は状況が全く変わっている。メスト・エジルを蚊帳の外に置いたことをはじめ様々なトラブルの種があり、どこで歯車が狂い始めたのかは定かではないが、選手たちのモチベーションを正しくコントロールできなくなっている。

 いくら戦術・戦略のプランを用意してもその通りに機能せず、メンバー選考にも混乱が生じて競争を促すこともできない。何をやってもうまくいかない最悪の状況は、昨季途中にウナイ・エメリ前監督が解任された当時と酷似していないだろうか。

 トップ4に入ってUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得しようなど、今の状況では夢物語に過ぎない。もはや残留争いに意識を向けなければならないかもしれない。試合が始まってもゴールの気配は薄く、オーバメヤンやラカゼットなどが期待を裏切り続ける。

 プレミアリーグでの勝ち点や順位表におけるポジションだけを見れば、エメリ解任時よりも危機的状況だ。当時はリーグ戦4勝6分3敗(勝ち点18)、現在は4勝1分7敗(勝ち点13)である。チーム内の不協和音が表面化するきっかけとなったのがぺぺやジャカの愚かな退場劇であり、あのレッドカードはアルテタ監督に対して向けられたものでもあったのかもしれない。

 一向に出口の見えない不振のトンネルの闇の中で、破滅へのカウントダウンはすでに始まっている。

(文:舩木渉)

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なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。

“新アーセナル様式”の今後を追う。

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【了】

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