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セリエA 3年前

冨安健洋が残した驚異的スタッツ。断トツトップの数字とは? 初ゴールだけでない輝き【分析コラム】

セリエA第14節、ボローニャ対アタランタが現地時間23日に行われ、2-2の引き分けに終わった。今季初ゴールを挙げた冨安健洋は、チームに貴重な勝ち点をもたらす活躍を見せている。センターバックとして厳しい評価を下される試合もあったが、右サイドバックとしてプレーしたこの試合はチームの中心になっていた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

主将不在のアタランタは攻撃陣が停滞

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【写真:Getty Images】

 アタランタのアレハンドロ・ゴメスはこれで2試合続けてベンチ外。ジャンピエロ・ガスペリーニ監督との関係はもはや修復不可能と報じられており、冬の退団は既定路線と見られている。

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 キャプテンであり司令塔を欠くアタランタはヨシップ・イリチッチとルイス・ムリエルの活躍で前半に2点を奪ったが、後半は失速した。イリチッチがハーフタイムで退いたことでアタッキングサードでの迫力を欠き、前線は孤立。ドゥバン・サパタ投入の効果も薄く、後半はシュート2本という数字に終わっている。

 アタランタ戦で冨安健洋は右サイドバックで起用された。開幕から全試合に先発していたロレンツィ・デ・シルベストリには一足先にクリスマス休暇が与えられ、ここ2試合は左サイドバックで起用されていた冨安が右に移された。

 2トップのアタランタに対し、冨安は最終ラインに残ることで数的優位を作ってビルドアップの起点となる。守備では逆サイドにボールがあれば絞ってクロスに対応し、ボールサイドにいるときは味方と連動してサイドの攻防に参加。空中戦での攻防でも冨安が優勢だった。

交代策で流れを手繰り寄せたボローニャ

 ボローニャは前半で2失点を喫した。強引なドリブルでペナルティエリア内に侵入するイリチッチを倒してしまい、ムリエルのPKでアタランタが22分に先制。その直後にクロスボールのこぼれ球を拾ったムリエルが、再びゴールネットを揺らした。

 しかし、2点のビハインドを負ったボローニャは交代カードを切って主導権を手繰り寄せた。冨安と息があっていなかったエマヌエル・ビニャートを65分に下げ、怪我から復帰したリッカルド・オルソリーニを投入する。

 オルソリーニ投入から8分後、冨安から右サイドに開いたオルソリーニにボールが出る。冨安はパスを出すとともに内側を駆け上がってリターンパスをもらうと、対峙したロビン・ゴセンスの裏を取り、前に出たGKの上を通す浮き球のシュートでゴールネットを揺らした。

 2人のコンビネーションで1点を返したボローニャはその後もアタランタ陣内に攻め込んでチャンスを作る。82分にはCKをニアでロドリゴ・パラシオが逸らすと、ゴール前で途中出場のネウエン・パスが頭で押し込んだ。

 2点差を追いついたボローニャからしてみれば、価値ある勝ち点1だった。連続未勝利は5試合に伸びたが、力のあるアタランタに対して粘り強く戦ったことは評価すべきだろう。

年齢に似合わない落ち着き

 シュトゥットガルトでプレーする遠藤航がまだ10代のころ、湘南ベルマーレの曹貴裁監督(当時)は「30歳くらいに見える」と言い、「失敗してもその後のプレーに影響しない」という理由でPKのキッカーを任せていた。22歳で日本代表デビューを果たした試合ではヴァイッド・ハリルホジッチ監督(当時)から「40歳のようなプレーだった」と言われていた。

 40歳はさすがに大げさだが、守備的な選手にとって実年齢より上に例えられるのは、一種の誉め言葉と言っていいだろう。冨安も22歳には見えないプレーを見せている。

 右サイドバックに入ったこの試合の冨安には安定感があった。データサイト『Whoscored.com』の集計では両チーム通じて唯一ボールタッチ数が100回を超え、パス成功数でもダントツトップの81回を記録。得点シーンがクローズアップされるかもしれないが、ビルドアップでの貢献度は非常に高かった。

 自陣でのパスが冨安に集められることもあり、冨安へのプレッシャーも次第に強くなる。それでもうまくボールを受けてパスコースを見つけていた。その中で81回のパス成功数は驚異的な数字と言っていい。

 リスクヘッジも秀逸だった。パス成功率が76.5%とそこまで高くなかったのは判断力の良さを表している。パスコースがないと分かれば、前線のパラシオに中距離のパスを当てる。カウンターを受けるリスクが低い選択肢を選び、不用意なピンチを招くことはほとんどなかった。

冨安健洋の適性ポジションは?

 今季の冨安はセンターバックでの出場が多い。ただ、今季はリーグワースト4位の27失点で、昨季にもましてチームの失点がかさんでいる。すべてが個人の責任ではないが、その一端を背負う形で冨安にも厳しい評価が下される試合も少なくない。

 日本代表のことを考えれば、冨安にはセンターバックとしてキャリアを歩んでほしいという期待がある。しかし、ボローニャでのプレーを見る限りは右サイドバックが天職のように見える。

 湘南と浦和レッズの最終ラインで起用されていた遠藤は、日本代表では世代別の頃から中盤でプレーしていた。そして、欧州では得意のデュエルを磨き、MFとしてリーグ屈指の評価を集めている。果たして冨安はどんな道を歩むのだろうか。

(文:加藤健一)

【了】

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