ギュンドアンが得点王でカンセロが司令塔!? 11連勝絶好調のマンCに一体何が起きているのか【分析コラム】

現地26日にプレミアリーグ第20節が行われ、マンチェスター・シティはウェストブロムウィッチ・アルビオンを5-0で退けた。公式戦11連勝&18戦負けなしのシティが、ついにプレミアリーグの順位表でトップに立っている。ウェストブロムウィッチ戦では絶好調なチームを象徴する2人の選手が輝きを放った。(文:舩木渉)

2021年01月27日(Wed)13時14分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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「走り過ぎ」が改善されただけなのか?

ペップ・グアルディオラ
【写真:Getty Images】

 今月上旬、ペップ・グアルディオラ監督が記者会見で発したある言葉が話題になった。

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「我々は走り過ぎていた。フットボールをプレーするときには、歩かなければならない。あるいは走る量をぐっと減らすべきだ。もちろんボールのないところでは走らなければならない。だが、ボールを持っているなら、ボールを走らせればいい。選手ではない。最近の試合ではその部分が改善された」

 現地13日のブライトン&ホーブ・アルビオン戦前日の記者会見でのことだった。その時点でマンチェスター・シティは公式戦6連勝中、ブライトン戦にも1-0で勝利。以後も着実に勝ち星を重ね、現地26日に行われたプレミアリーグ第20節でもウェストブロムウィッチ・アルビオンに5-0の完勝を収めた。公式戦の連勝は「11」まで伸びている。

 勝ち続けるなかでケビン・デ・ブライネが負傷離脱するアクシデントもあった。また、今季はセルヒオ・アグエロやガブリエウ・ジェズスといったストライカー陣が軒並み期待を裏切り、ほとんど結果を残せていない。

 にも関わらずチームは好調で、ウェストブロムウィッチ戦を終えたタイミングでついにプレミアリーグ首位に躍り出た。

 前年度王者リバプールが苦しむなど大混戦になっているリーグ戦において、これだけ勝ち星を重ね続けられるのは「走り過ぎ」を改善しただけなのだろうか。一体、ペップ率いるシティに何が起こっているのだろうか。

 ウェストブロムウィッチ戦を見ていて感じたのは「原点回帰」の姿勢だ。

 両ウィングがピッチの幅いっぱいに立ち、両サイドバックは積極的に内側へ絞ってゲームメイクにも関与する(いわゆる“偽サイドバック”の復活だ)。中盤のインサイドハーフはボールを前進させるだけでなく、ストライカーポジションの選手と立ち位置をどんどん入れ替えながら、果敢にゴール前まで侵入していく。

「やっぱりめちゃくちゃ走っているじゃないか!」とは思うのは、ボールのないところでの動きが活発になったからだろう。戦い方そのものはリーグ優勝した当時のシティの姿を思い出すようだった。連覇を果たした後も勝ち続けようと試行錯誤してきたはずだが、大きな変化が必要なのではなく、強かった頃の戦い方を洗練させていくべきだというところに辿り着いたのかもしれない。

タイミング抜群。ポジショニングの鬼

 最近のシティで主役を担うのは、イルカイ・ギュンドアンだ。直近のリーグ戦8試合で7得点を挙げ、チーム内得点王にもなっている。「ギュンドアンが得点王!?」と驚くのも無理はない。今の彼はデ・ブライネを欠く攻撃陣で、かつてのダビド・シルバのような役割を果たしながら決定的な存在へと進化を遂げている。

 これほど多くのゴールを決められているのは「正直、自分でもよくわからない。秘密はない」とのことだが、ゴールに近い位置でボールを触る機会が激増し、彼の高いシュート技術も合わさって面白いようにゴールが決まる。

 ウェストブロムウィッチ戦の6分、ジョアン・カンセロからのアーリークロスをペナルティエリア手前で巧みにコントロールし、相手DFを外す。そしてギュンドアンは自分の前に作った小さなスペースを利用して右足をコンパクトに振り、GKが一歩も動けない完璧な一発をゴールネットに突き刺した。

 ディフェンスラインを破る飛び出し、カンセロのアイディア、ギュンドアンのボールコントロール技術とあらゆる要素が非常に高いレベルで共存した先制ゴールだった。

 さらに2点リードで迎えた30分、ギュンドアンは浮いたボールの処理に手間取る相手ディフェンスに背後から寄せてボールを奪うと、ペナルティエリア内で目の前のDFを切り返しでかわし、GKの逆を突くグラウンダーのシュートを流し込んだ。

「僕はピッタリのタイミングで適切な場所にいようとしている。過去数週間は以前よりも攻撃的な役割を果たしてきた。相手のペナルティエリアに近づくチャンスがあれば、そこ場にいて、正しい決断を下せばいい」

 自身の1点目も「ボールを入れる時間とスペースがあるなら、そこに動き出す」というシンプルな思考で相手守備陣にギャップを見つけ出し、カンセロのクロスを引き出した。攻撃的なポジションでギュンドアンのインテリジェンスとテクニックは存分に発揮されている。

ギュンドアンが備える特別な「感覚」

イルカイ・ギュンドアン
【写真:Getty Images】

 シティにやってきたのは2016年夏だが、最初のシーズンは前十字じん帯の負傷で長期離脱を強いられた。復帰以降も決して主役ではなかった。インサイドハーフにはデ・ブライネやダビド・シルバがおり、アンカーにはフェルナンジーニョが君臨、近年はロドリの台頭もあった。

 起用されるとしても後半途中からか、フェルナンジーニョの代わりとしてアンカーに入ることが多く、ポテンシャルをフルに発揮できていたわけではない。それでも「信じられないほどの選手であり、人間性も素晴らしい」とグアルディオラ監督からの信頼は厚く、今季で在籍5シーズン目を迎えている。

 2得点を挙げたウェストブロムウィッチ戦後にも、指揮官は「ペナルティエリアに入る正しいタイミングを知っているだけではない。正しい一瞬を理解している。これが一番難しい。到達するのが1m早くても、逆に1m遅くてもダメで、ピッタリのタイミングでなくてはならないからね。ギュンドはこの感覚を持っているんだ」と、ギュンドアンの卓越した得点感覚を絶賛していた。

 盛んにポジションチェンジしながら近い距離で味方と連動し、狭いスペースでボールをどんどん動かし、ゴール前に侵入してフィニッシュも担う。シティで古参組の1人になったドイツ代表MFは、ようやく真に輝けるポジションと役割を確立したと言えそうだ。

 そして、もう1人、いまの絶好調に欠かせない選手がいる。それはウェストブロムウィッチ戦でギュンドアンの先制点をアシストしたカンセロである。自らも20分に狙いすました左足ミドルシュートでチームの2点目を決めていた。

 昨季からシティの一員になったポルトガル代表のカンセロは、両足を遜色なく使えてスピードにも優れる強みこそあったものの、これまで守備面の拙さを指摘されることが多かった。1年目はプレミアリーグで17試合の出場にとどまり、ゴールもアシストも残せていない。

右SBカンセロが発揮する攻撃性能

ジョアン・カンセロ
【写真:Getty Images】

 ところが今季は立場が変わった。本職でないセントラルMFも経験したが、一時は本命不在の左サイドバックでレギュラーに定着。最近は本業の右サイドバックで抜群の存在感を放っている。“偽サイドバック”の復活によって、ゲームメイカー的素質も開花しつつあるのだ。

 カンセロはウェストブロムウィッチ戦でボールタッチ「145回」、パス成功数「107本」、パス成功率「89.9%」という驚異的な数字を残した。そのうえ1得点1アシストも記録。自軍ポゼッション時はどんどん内側に入ってボールを前進させ、自らもペナルティエリア手前まで進出して多くのチャンスシーンに関わっていた。

 左サイドバックでも問題ないが、より輝くのは右サイドバックに入ったときだ。ウェストブロムウィッチ戦ではロングボールの精度も冴え渡り、アシストを受けたギュンドアンは「ジョアンは僕らがボールを持っているとき、普通とは違う役割を果たす。より中央寄りでプレーし、ボールによく触り、クオリティも高い。それを知っているから僕は走ったし、パスも完璧だった」と先制点の場面を引き合いに出しながらカンセロを称賛した。

 直近のFAカップでは4部のチェルテナム・タウンに大苦戦を強いられたが、カンセロは77分に投入されると、4分後にピンポイントクロスでフィル・フォーデンの同点弾をアシスト。一気にリズムを取り戻したシティは3-1で逆転勝利を収めた。

 90分間プレーすればカンセロのプレーエリアは広範囲にわたり、タッチ数が100回前後を記録するのは当たり前になりつつある。広い視野、卓越したプレービジョン、ゴール前での創造性、そしてGKを棒立ちにさせるほどのシュート技術。サイドバックらしからぬ数々の能力を備えたサイドバックが、シティ2年目でペップ流を習得して大化けの予感を漂わせる。

 チーム内得点王になったギュンドアン、裏の司令塔として決定的なプレーを連発するカンセロ。この2人が絶好調のシティをけん引している。

(文:舩木渉)

【了】

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