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日本代表 3年前

凄まじかった日本代表の新ボランチコンビ。柴崎岳より上なのは…。守田英正は長谷部誠と同じ道を辿れるか?【コラム】

日本代表は30日、カタールワールドカップ・アジア2次予選の試合でモンゴル代表と対戦し、14-0のスコアで勝利を飾った。韓国代表との親善試合も含めたこの2試合で目立ったのは、ボランチコンビの躍動。遠藤航と守田英正は、かつての遠藤保仁と長谷部誠のように、日本代表を長く支えるかもしれない。(文:元川悦子)

text by 元川悦子 photo by Getty Images

柴崎岳が軸だった日本代表

日本代表
【写真:Getty Images】

 南野拓実の先制弾に始まり、大迫勇也のハットトリックに伊東純也、古橋亨梧、稲垣祥の各2得点……。30日に行われたカタールワールドカップ・アジア2次予選・モンゴル代表戦の日本代表は、予選におけるチーム史上最多となる大量14得点を挙げて圧勝し、最終予選に弾みをつけた。

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 松原健や稲垣、中谷進之介といった新顔が代表デビューを果たし、試合途中には遠藤航をアンカーに配する4-3-3にトライするなど、森保一監督の采配にも余裕が感じられた。

 FIFAランク190位の格下との実力差を考えると手放しには喜べない。ただ、ロシアワールドカップアジア2次予選でシンガポールに0-0で引き分け、カンボジアにも0-2で苦戦を強いられた。これを考えれば、これだけ多彩な面々が得点し、戦い方のバリエーションも広がったのは収穫と見ていいだろう。

 前向きな要素の最たるものが、守田英正が台頭したボランチ陣の成熟度アップではないだろうか。

 2018年9月に森保ジャパンが発足した頃、日本代表のボランチの中心はロシアワールドカップで躍動した柴崎岳だった。長谷部誠が日本代表の一線から退き、同じロシア組の遠藤航が「1枠空いたということは僕らにとってチャンス」と目を輝かせたが、柴崎を軸に、遠藤航や青山敏弘、三竿健斗らが相棒として試される構図になっていた。

ボランチ争いに風穴を空けた守田英正

 守田もこの頃から頭角を表しつつあったが、2019年アジアカップ直前にケガで離脱。森保監督は冨安健洋や秘蔵っ子・塩谷司の抜擢を試みたが、最終的にはカタールに粉砕され、選手層の薄さを露呈する形になった。

 その後、指揮官は2019年のコパ・アメリカ(南米選手権)で東京五輪世代の板倉滉や中山雄太を試すなど、若い世代の引き上げを進めた。一方で、2019年9月に始まった2次予選当初は山口蛍(神戸)ら国内組のベテランも呼び、組み合わせや連係面を確認し続けた。

 こうした中、遠藤航がドイツ移籍によって飛躍的に成長。2020年の欧州4試合時点では「遠藤航が主軸という形でも全く問題ない」と評されるようになったが、柴崎の位置づけに関しては不動のままだった。

 今回の守田はそこに風穴を開けたのである。

 遠藤とのコンビで見せた日韓戦のパフォーマンスは凄まじかった。いい距離感を保って敵の攻撃の芽を摘み、巧みにゲームを作る。自らも前線へ飛び出し、思い切ってシュートを放つ。そのダイナミックさは圧巻だった。

「個人的には強度を求めて海外に行った分、この2カ月は球際とかセカンドボールを拾うことだったり、インテンシティの高さを意識してサッカーしてたので、そこの違いを見せたかった。海外組とも同じステージに立ったと思えるし、自分から発信する行動力も少なからず芽生えた部分かな」と本人も自身の成長を実感している様子だったが、周囲も見方は大きく変わっていた。赤丸急上昇の評価を落とさないためにも、モンゴル戦でのコンスタントな働きが必要不可欠だったのだ。

守田英正が入ることで生まれる躍動感

 迎えた30日のゲーム。連続先発した守田は主に中盤の底でプレーしつつ、遠藤をフリーで動かせるように意識した。

「相手が1ボランチ気味だったんで、2ボランチの間に守田が立って、自分はどっちかというとサイドのところで少し起点を作りながらプレーしていた」と遠藤航も説明。その分、守田が低い位置から伊東らサイドに大きな展開を見せたり、強気の縦パスを差し込む場面が多くなった。

 前半途中からは自ら飛び出していく回数も増え、それが33分の4点目につながる。「日韓戦で航君が最後ヘディングで決めたように、点を取るのと取らないのとでは全然話が違う」と危機感を募らせていただけに、代表5戦目の初ゴールには安堵感を覚えたのではないだろうか。

 結局、モンゴル戦のプレー時間は前半45分のみ。後半も最後までピッチに立ってアンカーや稲垣とのダブルボランチの一角を務めてゲームをフィニッシュさせた遠藤に比べると「もう少しできたのではないか」という印象も残る。それでも、代表初の公式戦という意味では悪くない出来だった。

 守田が入ることでチーム全体に躍動感が生まれ、ボランチ自らゴール前に出ていく回数も増える。さらにデュエルやボール奪取の部分でも厚みが生まれる。守備の粘り強さは柴崎が入った時より上だったかもしれない。そういう意味でも、新ボランチコンビは新たな強みをもたらしたと言っていい。

長谷部誠と同じ道を辿れるか

「岳君には攻撃のセンスだったり、1本で刺すようなパスとかキックの精度がある。そこは僕にはまだまだ足りてない部分かなと。僕が岳君を超えていくには、攻撃の部分でもっと光る特徴を作っていかないといけない」と本人は課題を口にしている。

 しかし、柴崎が所属のレガネスで苦境に陥っている今、ポルトガルでコンスタントに実績を積み重ねている守田にはそれを克服する場が用意されている。そこは前向きに捉えるべきだ。最終予選がスタートする半年後までに彼なりの道筋をつけられれば、本当に遠藤航&守田のボランチコンビがファーストチョイスになるかもしれない。

 2008~15年までの7年間、遠藤保仁と長谷部が鉄板コンビを形成したように、ボランチが安定していれば、チーム全体はスムーズに回っていく。彼らがその後継者になってくれれば、森保監督にとっても朗報だ。

 もちろん柴崎もこのまま黙っていないはず。今回インパクトを残した稲垣も虎視眈々と代表定着を狙っていくだろう。呼ばれなかった国内組の山口やケガで辞退した原川力らも悪くないし、U-24世代の板倉、田中碧もA代表主力確保に燃えている。

 となれば、遠藤航と守田も安穏とはしていられない。特に守田は今回の強烈なアピールを今後につなげることが肝要だ。思い返せば、長谷部もドイツ移籍直後の2008年5月のコートジボワール戦で劇的な変貌ぶりを印象づけ、一気に代表ボランチの定位置をつかんでいる。25歳のMFは偉大な先人と同じ道を辿れるのか。ここからが非常に楽しみだ。

【了】

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