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Jリーグの努力は無駄だったのか? 村井満チェアマンが無観客試合への無念語る「私に社会に伝える力があれば…」

text by 編集部 photo by Getty Images

村井満
【写真:Getty Images】

 Jリーグは27日、今年度の4回目となる理事会後にオンラインで記者会見を実施した。

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 政府による4都府県への緊急事態宣言が発出され、Jリーグでは5月11日までに予定されていた公式戦11試合の無観客開催が決まった。

 Jリーグの村井満チェアマンは再び1年前と同じ「リモートマッチ(無観客試合)」での公式戦開催になってしまったことに対し、「昨年1000試合を超えるお客様を迎えての試合を行うなかで、多くのお客様の協力で感染拡大をしない自負もある中ではありましたけれども、今回はそれ(緊急事態宣言と政府からの要請)を受け止めて対応せざるを得ない、そういう心情であります」と無念を口にした。

「今回のコロナばかりは誰が悪いわけでも、誰に責任があるわけでもないし、Jリーグの責任者として正直なところ自分の力のなさを、何の他意もなく、心からそう思っている次第です」

 様々な新型コロナウイルス対策を講じ、昨年は1042試合で有観客の公式戦を開催することができた。Jリーグのスタジアムでは新型コロナウイルスのクラスターなどは発生しておらず、他のスポーツ団体の競技会開催に対して有益な先行事例も多く作ってきた。

 にもかかわらず、東京都や大阪府、京都府、兵庫県に緊急事態宣言が発出されると、政府や自治体からは「無観客開催」を要請された。Jリーグが地道に積み上げてきた努力は一見無駄になってしまったようにも思える。非情な通告だった。

「豊かなスポーツ文化を振興する担い手はファン・サポーターであり、とにかくお客様とできる限りやりたいというのが我々の思いでした。当然プライオリティの一番は国民の健康を優先することでしたので、(昨年は)4ヶ月にわたる中断もしました。最終的には政府や行政の方針に従うことを最初に決めていましたし、その次にはいろいろなことを飲み込んでもサッカーを続けようということで、昇降格なしなどをやってでも、不公平を飲み込んでもサッカーをやろう、その状況のなかでお客様と一緒にやろうということで、1042試合をやってきたわけです。

これを支えたのはファン・サポーターの皆さんでした。本当に胸が熱くなるような思いで、手拍子で言葉を飲み込みながら応援しているファン・サポーターの皆様の表情を見ていて、こうした皆さんの努力で1042試合ができたと本当に思っていました。ファン・サポーターの皆様が『お客様を迎えてもスタジアムが危険ではない』と証明してくれたわけですし、しっかり私が社会にそういうことを伝える力があれば…エビデンスやファクトを通じて関係各所にしっかりお伝えできていればもう少しストーリーは変わったのかもしれません」

 村井チェアマンの言葉の端々からは、緊急事態宣言によって無観客試合で公式戦を開催せざるを得なくなってしまったことへの無念が伝わってきた。一方で「サッカーだけの話ではなくて、多くの人びとが市中を公共交通を使って移動することが、この状況では1つのリスクであることもよくわかります。そういう意味では、サッカーだけの判断が通用しないこともよく理解しています」ともチェアマンは語る。

 ファン・サポーターの期待に対し「結果を違えることになってしまった」と述べた村井チェアマンは、忸怩たる思いの一方で、今後に向けて前向きな思いも明かしている。

「今後引き続き、ファン・サポーターの皆様と安全な空間を作り続け、それを社会にしっかり伝えていき、少しでもスポーツがお客様とともに実現できることを望み続けていこうと考えています」

 有観客で公式戦を開催できるクラブや、会場に集まるファン・サポーターはチェアマンの思いも尊重し、今後も引き続きコロナ禍でも安全に試合を運営できることを証明し続けていく必要があるだろう。Jリーグは非情な要請を受けても立ち止まることなく、前に進み続けていく。

【了】

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