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なぜ南野拓実にパスが来ないのか。報われない献身的な動き、攻撃のリズムを狂わすプレーとは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

プレミアリーグ第36節、サウサンプトン対クリスタル・パレスが現地時間11日に行われ、3-1でサウサンプトンが勝利を収めた。2試合ぶりに先発した南野拓実は、およそ3か月ぶりとなるフル出場を果たした。献身的なプレースタイルはチームにいい影響を与えているが、肝心の数字がついてこないのはなぜなのだろうか。(文:加藤健一)

フル出場の南野拓実

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【写真:Getty Images】

 この試合が始まる前の段階で、サウサンプトンは勝ち点37、クリスタル・パレスが勝ち点41。前日にフラムが敗れ、プレミアリーグから降格する3クラブがすべて確定した。これによって、サウサンプトン対クリスタル・パレスは、上位争いに加われなかったが残留も決めた者同士の一戦となった。

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 サウサンプトンはリバプール戦から中2日、クリスタル・パレスはシェフィールド・ユナイテッド戦から中3日。契約上の問題でリバプール戦を欠場した南野拓実は先発で起用された。サウサンプトンはリバプール戦で先発したセオ・ウォルコットの契約延長を望んでいると報じられているが、怪我がちの32歳を連戦で起用するのはリスクがある。万全の状態だった南野の起用は至極自然な流れだった。

 両チームとも大幅なターンオーバーを敷いていない。しかし、ともに残留を決めているだけあって、ところどころにゆるみが感じられた。サウサンプトンは立ち上がりに失点。FKのセカンドボールを拾ったクリスティアン・ベンテケに寄せきれず、ゴールを許してしまった。

 しかし、クリスタル・パレスにも球際の激しさはなかった。ネイサン・レドモンドのクロスを復帰明けのダニー・イングスが受け、反転から素早く振り抜いた。クリスタル・パレスのDFの寄せは甘く、イングスのシュートはゴールネットを揺らしている。

 1-1で折り返したサウサンプトンは後半の立ち上がりにCKから逆転する。さらに、75分にはイングスに2点目が生まれてリードを2点に広げた。サウサンプトンにとっては、5試合ぶりの勝利となっている。

怠らない準備と数字に表れない貢献

 得点もアシストもなかったが、南野の貢献度は高かった。自陣で味方がボールを奪えば、2トップを追い越さんばかりのスプリントを見せた。守備への意識も高く、右サイドバックのカイル・ウォーカー=ピータースをサポートしていた。

 特筆すべきは54分の場面。クリスタル・パレスは自陣右サイドでボールを奪うと、左サイドでザハがボールを受けてドリブルを開始。センターバックのヤニク・ヴェスターゴーアが対応したが、ウォーカー=ピータースより前にいた南野がヴェスターゴーアの長い距離を走り、いち早くヘルプに入った。

 囮になるのを厭わず、たえず動き直してボールを引き出すプレーが印象的だった。1点目のシーンでもイングスのシュートをGKが弾いていれば、押し込めるところに南野は走りこんでいる。3点目のプレーでも、南野にパスが来ていればGKとの1対1だった。タラレバではあるが、プレーする準備を怠らない姿勢は、結果へとつなげるために必要だ。数字には表れない部分での働きは非常に効果的だった。

南野拓実にボールが集まらない理由

 ただ、あまりにもボールが南野に来ない。期限付き移籍だから、冬に加入したばかりだからというのは後付けの理由で本質的ではない。エースのイングスにボールが集まるのは当然だが、「南野にボールが渡っていれば」というシーンは何度もあった。

 南野はライン間でボールを引き出すのがうまい。南野が中央に入ることで、サイドバックのウォーカー=ピータースは高い位置を取れる。3点目のシーンのように最前線のイングスは裏を狙い、チェ・アダムズは左から南野のようにライン間を狙う。そして、左MFのレドモンドは幅を取る。サウサンプトンの攻撃は各々のバランスが良く、互いの特徴を補完していた。

 スペースがないときにどうするかが最大の課題だ。相手が近くにいる場面で、南野はワンタッチでボールを戻すことがよくある。南野はボールを返すことでスペースを生み出したいのかもしれない。しかし、サウサンプトンの攻撃はダイレクト志向。それ自体が悪いというわけではないのだが、サウサンプトンらしい攻撃のテンポではなくなってしまう。

 52分の場面でサウサンプトンは自陣でボールを回収し、ロングカウンターを狙っている。南野は右サイドを駆け上がってパスを引き出したが、相手に身体を当てられて体勢を崩してしまった。これを見てしまうと、味方が南野へのパスをためらうのも納得がいく。

 中盤のチームメイトに目を向けると、ジェームズ・ウォード=プラウズやスチュアート・アームストロングはこの能力が非常に高い。相手に寄せられてもボールタッチは乱れず、しなやかにターンして前を向いてしまう。結果的に味方も2人へはボールを信頼して預けられる。相手に寄せられた状況でもキープできるようになれば、ゴール前でも南野にボールが集まるのではないだろうか。

 先述の通り、オフ・ザ・ボールでの動きは非常に効果的だ。スペースがあるところでボールを受ければ輝ける。相手に寄せられたときに振舞いを改善できたとき、南野にチャンスが回ってくるのかもしれない。

(文:加藤健一)

●3か月ぶりのフル出場! 南野拓実のプレーがこれだ! サウサンプトン対クリスタル・パレス ハイライト

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【了】

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