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EURO2020 3年前

背番号5がスペイン代表を蘇らせた。5得点で快勝、キャプテンの復帰で生まれた攻撃の形とは?【ユーロ2020分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

見えてきた攻撃の形



 5得点のうち2得点はオウンゴールだが、3得点はサイドからのクロスという形だった。ジェラール・モレノのアシストからアイメリク・ラポルテが決めた前半終了間際の2点目は偶発的だが、3点目と4点目はサイドからゴール前に低くて速いクロスを入れている。

 スウェーデン代表戦ではインサイドハーフはゴール前まで飛び出すのが難しかった。ビルドアップの局面で低い位置でボールに関わる仕事を求められたからだ。インサイドハーフが降りてきてサイドバックを押し上げる形が多かったが、それだとゴール前でモラタが孤立する。3点目のようにスペースを作る動きは巧いが、ロメル・ルカクのように1人でどうにかできるタイプではない。スペースを活用する選手がいて初めて評価される。

 ゴール前に飛び込んでくる選手がこれまでの2試合よりも増えていた。前線3人だけだったが、スロバキア代表戦ではインサイドハーフも積極的にゴール前に顔を出している。ビルドアップは4バックとセルヒオ・ブスケッツで出口を見つけられていたので、ペドリやコケは高い位置で仕事ができるようになった。

 彼らがライン間でボールをさばければ、3点目のシーンのようにジョルディ・アルバも活かされる。ビルドアップの改善という点で、ブスケッツとアスピリクエタが果たしていた役割は大きい。

「これこそが我々がプレーし続けていきたいやり方。これが自信と士気を生むだろう」

 スペイン代表に戻ってきたブスケッツは試合後にそう言った。今大会はスロースタートとなったが、やりたい形はおぼろげながら見えてきた。キャプテンの復帰がチームを蘇らせたと言っていいだろう。

 次なる問題はこの戦い方が力の拮抗する決勝トーナメントで通用するかと、PKのキッカーを誰にするかだ。スペイン代表は現地時間28日に、ラウンド16でクロアチア代表と対戦する。

(文:加藤健一)

【了】

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