U-24日本代表の運命を分けたPK戦、完全ドキュメント。ニュージーランド戦最後の11分間に何が起こっていたのか【コラム/東京五輪男子サッカー】

2021年08月01日(Sun)12時30分配信

シリーズ:コラム
text by 舩木渉 photo Getty Images, JMPA
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上田綺世の決意と覚悟

上田綺世
【写真:JMPA代表撮影】



 吉田とクリス・ウッド、両キャプテンがコイントスで順番を決め、ニュージーランドが先攻に。PK戦はメインスタンド側から見て左のゴールで行われることになった。

 泣いても笑っても、これで勝負が決まる。PK戦最初のキッカーには、ニュージーランドのキャプテンを務めるウッドが歩み出た。プレミアリーグでの実績も豊富なエースストライカーは、谷が跳んだのと逆のゴール右隅に落ち着いてシュートを決める。ニュージーランドが先行した。

 日本の1人目のキッカーは上田。大きく息を吐きながらペナルティスポットに向かった背番号18は、祈りを込めるように額にボールを当ててから地面に置き、笛の音から少し時間をおいて助走に入る。しっかりと力の伝わったボールは、GKウートの動きと反対側、ウッドと同じゴールの右隅に突き刺さった。蹴る前にコースを決め、読まれないように駆け引きしたストライカーらしい1本目だった。

「昔から言っていることですけど、FWが点を取る要素だったり、何かの節目にあったときに必ず運が必要だと思うし、自分自身のキャリアを見ても、ラッキーパンチじゃないですけど、そういうところに助けられた。自分が今まで背負ってきたものをここで出さないといけないし、あのひと蹴りで僕の人生を、これまでの人生を(未来に)つなげることにもなるので、その念を込めました」(上田)

 蹴る前にコースを決め、読まれないように駆け引きしたストライカーらしい1本目だった。上田の成功は、「1本目に自分がしっかり決めてチームを勢いづけることしか僕にはできない」という考えの通り、間違いなくチームメイトに勇気を与えた。

 ニュージーランドの2人目は、リベラート・カカーチェ。ここで谷の4年越しの想いが結実する。

 2017年、当時U-17日本代表だった谷はインドで行われたU-17ワールドカップに出場した。決勝トーナメント1回戦、相手はのちに頂点に立つU-17イングランド代表だったが、日本は劣勢に立たされながらも辛抱強く守ってPK戦に持ち込む。勝利まであと一歩だったが、そのPK戦で谷は1本も止められず、日本は3人目の喜田陽が失敗して敗退が決まってしまった。当時のU-17代表選手たちにとって、世界を強く意識し、キャリアのターニングポイントとなった一戦だった。

「ようやく挽回するチャンスきたな、という感じでした」(谷)

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