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「正直ありえない」と久保建英も憤慨。選手を蝕んだ過酷な気候と日程、他国代表選手たちも悲鳴【東京五輪】

text by 編集部 photo by Getty Images

久保建英
【写真:Getty Images】



 U-24日本代表は6日、東京五輪男子サッカーの3位決定戦でU-24メキシコ代表に1-3で屈し、銅メダル獲得を逃した。

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 これまでほぼフル稼働で奮闘してきた日本の主力選手たちは、明らかに疲弊していた。無理もない。グループステージ初戦から6試合、全て「中2日」という厳しいスケジュールをこなしてきたのである。

 夜遅くに試合を終えて、翌日は完全にリカバリーに充て、その次の日はもう「試合前日」になっている。次の試合までにチームで練習できる時間も量も限られていて、試合を重ねるごとに選手たちには疲労が蓄積されていった。

 メキシコに敗れた後、日本のMF久保建英は「日程だけ言わせてもらうと、正直あり得ないと思います」と厳しすぎるスケジュールに苦言を呈した。さらに「こんなに短期間で6試合もやって。試合の前日に(キックオフ時間が)変更されて。本当は勝って文句を言いたかったですけど、負けたのでもうこのくらいにして…」と続けた。

 久保が怒る理由はごもっともだ。7月22日の初戦から8月6日の3位決定戦まで16日間で6試合というのは、たびたび過密日程が問題になる欧州でもなかなかない。しかも東京五輪は湿気や暑さとも戦わねばならない日本の夏場に開催されている。

 ほとんどの試合が17時以降のキックオフだったとはいえ、全く暑くないわけではない。選手たちの体も心も徐々に蝕まれていき、準決勝や3位決定戦ではどの国も軒並みパフォーマンスを落としていた。

 同じことが女子サッカーでも起こっていた。8月2日に行われた準決勝、スウェーデン女子代表対オーストラリア女子代表の一戦は、今大会で最もローテンポな試合の1つだった。

 試合後に話を聞いたスウェーデンのDFハンナ・グラスは「最後の30分は本当にキツかった。とても湿気があって、こういう気候は女子ワールドカップでも女子EUROでも経験したことがないし、私たちは慣れていない。どのチームも同じ条件ではあるけど、誰もが疲れ切っていたし、終盤は精神力の勝負だったと思う」と語った。

 日本に乗り込んできていた他国代表チームたちも、大会終盤に差し掛かるにつれて疲労の色は濃くなっていた。宿泊先を出られるのは練習場や試合会場を訪れる時だけ。スウェーデン女子代表のDFマグダレナ・エリクソンは「リラックスできているし、みんなでゲームなどをして楽しむこともできている」と語ったが、「試合と試合の間に2日間しかなく、とても忙しない大会。これまでにこんな気分になったことはない」というのが本音のようだった。

 必死の思いで決勝の舞台にたどり着いたスウェーデン女子代表も、カナダ女子代表に敗れて悲願だった金メダル獲得を逃した。この決勝も当初は7日の11時キックオフ予定だったが、前日午後に急きょ試合時間と会場が変更に。

 国立競技場で11時キックオフの予定が、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)で21時キックオフに。それともない20時開始予定だった男子サッカーの3位決定戦は18時キックオフに繰り上がった。久保が「試合の前日に変更されて」と話していたのは、このことだ。

 11時キックオフがテレビ放送的な事情を多分に含んでいたにせよ、「アスリート・ファースト」であったかには疑問が残る。スウェーデン女子代表の選手たちも酷暑が予想される午前中のキックオフに対しては「おかしな時間設定」だと異を唱えていた。

 それでも準決勝から決勝までは今大会唯一「中3日」の準備期間があり、グラスは「(中2日に比べて)1日あるだけで本当に大きい。フィジカル的にもメンタル的にも回復できる時間が十分にある」と安堵していた。

 もちろん五輪の開催期間を今以上に長くすることはできない。だが、サッカー競技に限って言えば殺人的なスケジュールでアスリートたちにとっては精神的にも肉体的にも大きな負担を強いる構造になってしまっている。日本に限らず、他国でも近年は夏場の気温上昇などが見られ、今後の大会でも東京五輪と同様の問題が起こるだろう。

 日本サッカー協会の反町康治技術委員長も「いままで(登録メンバー)18人で、3人交代でやっていたと思うとゾッとするんですよね。相当タフな精神力とフィジカルは今後も必要になってくる」と語っていた。

 大会直前にバックアップメンバーの運用に変更があり、実質的に22人のチームで戦えることになったことの好影響を実感していると同時に、もし18人登録のままだったら途中離脱者が多発するリスクは大きかった。

 東京五輪ではこのような直前のレギュレーション変更だけでなく、先に述べたような突然のキックオフ時間変更など様々なゴタゴタによって運営面の課題が噴出した。3年後のパリ五輪に向けても、サッカー競技は大会方式など多くの面で見直しが必要な時にきているのかもしれない。

 8日の20時30分にキックオフされる男子サッカーの決勝ではU-24ブラジル代表とU-24スペイン代表が激突する。準決勝ではともに延長戦含めた120分間の死闘を戦い抜いたチームだが、中3日という準備期間を経てパフォーマンスが向上するのか、あるいは疲労の影響が色濃くプレーに反映されるのか。最も質が高くなければならない金メダルをかけた大一番は、今後への指標となるに違いない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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