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東京五輪 3年前

東京五輪が選手を限界まで追い詰めた。酷暑、過密日程、そして…2週間の中で聞こえた悲鳴の数々【英国人の視点/東京五輪サッカー】

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

全員が完全に疲れていた


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【写真:Getty Images】

 後半45分間の終了が迫り来る中、日産スタジアムには緊張感が漂っていた。五輪金メダルをもたらす最後の一撃を繰り出すため、強豪ブラジルとスペインが残された最後の力をお互い堂々とぶつけ合っていた。

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 しかし重苦しい空気を生んでいたのは湿度だけでもなければ、試合の持つ意味の大きさだけでもなかった。戦っていたのは何万人もの観衆の期待を背負いつつ大舞台でプレーすることに慣れた選手たちばかりだが、神奈川の巨大スタジアムの7万の空席に響き渡る彼らの声からは、苛立ちが強まる一方であることが感じ取れた。身体能力に恵まれた若いプロアスリートである彼らは、明らかに疲弊しきっていた。

 キックオフ数時間前の時点からすでに、スタジアム内は全体的な疲労感に支配されていた。会場スタッフもボランティアもメディア関係者も過酷なスケジュールを経て消耗している。こういったイベントの最後は普通であれば興奮と期待感を抱いて走り抜けるものだが、むしろ誰もが夢遊病者のようにフラフラとゴールテープに向かって歩いていた。全員が完全に疲れ果てていた。

 その前日には、U-24日本代表も崩れ落ちてしまった。関塚隆監督の率いた2012年ロンドン大会のチームと同じくメキシコに敗戦。1-3の完敗を喫して表彰台を逃したあと森保一監督は、メキシコが手強い相手であっただけではなく、選手たちは疲労とも戦い続けていたことに何度も言及していた。

【次ページ】あの遠藤航ですら…

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