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バルセロナ、歴史的大敗はなぜ起こった? 擁護できない自滅行為、CLの舞台に相応しくなかったのは…【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

武器を潰したクーマン采配の謎



 バルセロナにとって開始わずか3分の先制点献上は痛かったが、先述した通りその後チャンスを作れていなかったわけではなく、むしろ早めに同点に追いつてもおかしくないシーンを何度か迎えていた。

 とくにベンフィカDF陣の脅威となっていたのが、3-5-2の右インサイドハーフに入ったフレンキー・デ・ヨングだ。中盤からペナルティーエリア内へタイミングよく飛び込んでくるオランダ代表MFを、ホームチームはまったくと言っていいほど捕まえきれていなかった。

 10分にはペドリのスルーパスに抜け出したF・デ・ヨングがGKオディッセアス・ヴラホディモスとの1対1を作り出し、30分にはセルジ・ロベルトのロングパスに反応し、背番号21は再びボックス内でフリーとなった。いずれのシーンも最終的にはF・デ・ヨングがパスを選択したことで得点にはならず、そこには多少の勿体なさが残ったが、バルセロナの武器になっていたのは確かだった。

 しかし、それをぶち壊したのが他でもないロナルド・クーマン監督だ。33分にジェラール・ピケを下げ、ガビを投入。それまでベンフィカの脅威となっていたF・デ・ヨングを最終ラインに下げたのである。

 ピケをベンチへ下げた理由は簡単だ。早い時間にイエローカードを貰っており、その後あわや2枚目というファウルを犯していたため、クーマン監督は退場による数的不利な状況を避ける選択をしたのである。それは理解できなくないが、F・デ・ヨングを最終ラインに下げたのは悪手と言わざるを得なかった。

 案の定、F・デ・ヨングが一列下がった後のバルセロナは、シュートはおろかチャンスすらほぼ作れなくなっていた。5-2-1-2のような形で守るベンフィカ相手にボランチの外、つまりウイングバックの位置で比較的フリーでボールを持つことはできたが、その後がまったく続かない。メンフィス・デパイもルーク・デ・ヨングも、ただ前線にいるだけのような形になっていた。

 事実、ピケが交代する33分までバルセロナはベンフィカを上回る6本のシュートを放っていたが、その後のシュート数は2本にまで減少している。クーマン監督がベンフィカに守りやすい状態を与えてしまったのは否めない。

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