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田中碧&守田英正が日本代表にもたらすものは? 「後出しジャンケン」戦術が機能、遠藤航も加えた中盤トリオ躍動【W杯アジア最終予選】

text by 編集部

田中碧 守田英正
【写真:Getty Images】



 日本代表は12日、カタールワールドカップのアジア最終予選でオーストラリア代表に2-1の勝利を収めた。

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 負けや引き分けではワールドカップ予選突破が大きく遠のいてしまう極めて重要な一戦で、日本代表の森保一監督はシステム変更に踏み切った。慣れ親しんだ4-2-3-1から4-3-3(監督の言葉では「4-1-4-1」)に。結果的に、この戦術変更は勝利につながった。

 最後方からチームを支えたGK権田修一には、4-3-3が機能する予感があったという。オーストラリア戦後の取材の中で「普段の練習から『俺、ここに(ボールが)入ったら、ここに入ってくるから見てください』とか、みんなが高いレベルでコミュニケーションをずっと取っていたので、それを見ていて、練習のときから今日の試合はスムーズにいくんじゃないかなって思っていました」と語った。

「田中碧選手も守田(英正)選手もボールをまったく恐れず、守田選手はずっと『大丈夫だから。落ち着いて回せるから』と、相手がプレッシャーに来ていてもずっと中で喋っているくらい、自信を持ってやる選手なので、そういう自信を持ってできたのがよかったと思います」(権田)

 左サイドバックで起用されたDF長友佑都も4-3-3の「メリット」を実感した。35歳のベテランは「守田や田中碧が入って、中盤でタメができ、ボールを持てる時間が増えたのは感じています。そこで時間が作れるので、僕が高い位置を取ることによって中に入った南野(拓実)がフリーになれたり、大迫(勇也)と近い距離感でプレーできたり、すごくよかったんじゃないかなと思いますね」と振り返る。

 新システムの練習は前々日と前日の2回のみ。それでも破綻なく機能したのは、MF遠藤航やMF田中碧、MF守田英正で構成される中盤のトリオがそれぞれに積み重ねてきた経験あってこそだ。

 たとえば田中と守田は川崎フロンターレ時代に阿吽の呼吸と言えるまでコンビネーションを磨いてきた仲。さらに田中と遠藤は、この夏の東京五輪でダブルボランチを組んだ。遠藤と守田も日本代表戦で同時に出場した経験があり、3人とも互いに誰がどう動くかを熟知していた。

 トリオ内で最年長の遠藤は「攻撃はお互い、中盤3枚の距離感を意識して、しっかり立ち位置を取って、しっかりボールを動かしていこうと話していました。守備では(守田と田中の)2人に相手のダブルボランチに(プレスに)行かせて、自分はディフェンスラインの前に立って、こぼれてきたら自分がしっかり全部奪う意識を持ってやっていたので、役割はハッキリしていたのがよかったと思います」と語る。

「お互いの距離感を近くしてやろうと試合前から話していたので、それはよかったと思うし、誰がどこのポジションを取っても同じようにやれるのは強みだったなと。みんながお互いのポジションを見ながら立ち位置を変えるのは、かなり意識しながらやっていました。中盤3枚があれだけ距離感よく(ボールを)動かせると、周りの選手がより生きてくると思うし、拓実も結構中に入ってきて、相手も中盤はつかみづらかったと思うし、お互いを見ること、どこに立つかが今日は大事だったと思います」(遠藤)

 守田も新システムに手応えを感じている。オーストラリアに勝利し「今日は個々の選手の特徴を活かせたと思います」とポジティブな感覚だ。

「守備で奪ってから速い攻撃もできたし、無理に行かずに押し込むのも選べたし、後出しジャンケンのように相手を見て判断して(プレーを)やめられるというのが全体的にできたなと。4-3-3は今までになかったシステムですけど、自分たちがやりたいサッカー、見ていてワクワクするサッカーを表現できたんじゃないかと思います」(守田)

「攻撃では航くんがバランスを見ながらプラスワンで碧が(ディフェンスラインの近くまで)落ちて安定化を図る。僕は普段と同じようなプレースタイルですけど、今日は(選手と選手の)間で受ける動きや、背中を取る動き、前でできるだけサコくん(大迫)と関わってチャンスメイクするのが必要だと思っていました。守備の時は3人で補完しながらできましたし、攻撃も3人とも似たような役割をやりながら、うまく違う働きを示せたなと思います」(守田)

 唯一、田中だけが「立ち位置は味方の位置も見て必然的に決まるものなので、そうやってプレーできればチームがよくなるし、チャンスも増えると思っていました。いいシーンはそういうのが作れていた」と述べつつ、自分たちのパフォーマンスに満足していないようだった。だが、そうやって改善点を振り返ることができるのはプレー内容に前向きな材料が多かったからに他ならない。

「もっともっとボールを握りたいのが本音ですし、もっともっと守備もしっかりハメたい。そこをしっかりと反省して、チームとしてはもちろん、個人としても成長していけると思う。もっともっと中盤を制圧していかないといけない。(制圧)できるとも思っているので、まだまだ足りないなあと、すごく感じています」(田中)

 森保監督曰く、4-3-3の採用は「我々のストロングポイントがしっかりと出せるように、そして相手の良さを消せるように」という考えを念頭に置いたもの。遠藤は「新しいオプションができたと思う。やり方を変えてよかった」と今後の4-3-3継続にも意欲を示していた。

 田中や守田の存在によって守備の強度が増し、攻撃ではピッチのあらゆるところに複数の起点ができた。試合によって中盤をダブルボランチ+トップ下の正三角形と、アンカー+2シャドーの逆三角形の2パターンで使い分けられるようになれば、戦術の幅は大きく広がる。日本代表は大一番の勝利で、今後のワールドカップ出場権獲得に向けた戦いへの重要な鍵を手に入れた。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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