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古橋亨梧は試合に出れば結果も出す。ELで2試合連発、それでもポステコグルー監督が懸念することとは?【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 舩木渉 photo by Getty Images

信頼されているからこそ…

古橋亨梧
【写真:Getty Images】



 おそらくポステコグルー監督としても、できるなら古橋を毎試合先発でピッチに立たせたいだろう。実際、週に2試合のペースで先発起用していた時期もあったし、古橋自身もそれに耐えうる力強さを発揮していた。

 しかし、Jリーグでプレーしていたことを考えると、本来であればシーズン終盤の最も疲労が蓄積している時期。さらに古橋は毎月のように日本代表合宿に参加するため、欧州とアジアを往復する長距離移動や厳しい連戦を強いられている。

 まして欧州トップレベルの環境に挑戦し始めて数ヶ月という段階で、日本よりも心身ともに高い強度が求められる環境でかかる負荷の重さは計り知れない。ポステコグルー監督は古橋がチームを勝たせるための重要な存在だと信頼しているからこそ、大きな怪我のリスクを極力減らすように、どこかで燃え尽きることのないように、慎重に状態を見極めているのだろう。

 また、ポステコグルー監督は横浜F・マリノス時代から、負傷明けの選手や新加入選手を積極的にピッチに立たせてチームに馴染ませていく方針だった。ジャコマキスやジョンストンらの復帰によって選択肢が増えた今、中長期的な視点に立って選手層をより充実させるために彼らに多くのプレー時間を与えているとも考えられる。

 古橋は以前「10回動いて、1回パスが出てくればいいという精神で動き出しています」と語っていたが、セルティックでは「1回」が「5回」にも「6回」にもなってきている。周囲のチームメイトは必ず背番号8が最前線で走り出すタイミングを見ているし、いい形でパスが出てくるようにもなった。

 非常に良好な関係を築いているジョタも、古橋について「彼の動きは信じられないほどうまい。僕が見てきた中でも、動き出しについては最高の選手の1人だ」と手放しで称賛する。

「キョウゴは『英語がわからなくてもやれる』と言っていたのは面白いよね。だから僕が日本語を勉強して、喋れるようにしようと思っているよ。僕は絶対に彼と話すために日本語を学びにいく。でも、最も重要なのはピッチの中で僕たちがお互いのことを理解し始めていること。試合を重ねるごとに僕たちの関係性はもっと良くなっていくはずだ」

 チームメイトからこれだけ信頼される重要な選手だからこそ、ポステコグルー監督としては何かしらの理由で古橋を失うリスクを避けることが必要だと考えている。ベンチスタートになっても、即ちポジションを失ったという意味ではない。

 むしろ信頼が厚くなっている証と捉えるべきだろう。欧州サッカーの強度に適応しつつある古橋が、今後どのようにステップアップしていくか楽しみで仕方ない。

(文:舩木渉)

【了】

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