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中島翔哉、完全復活への道筋は? リーグ戦1039日ぶりゴール、見つかりつつある最適な起用法【コラム】

シリーズ:コラム text by 舩木渉 photo by Getty Images

中島の復帰とともに変化したシステム



 ところが63分にMFカルリーニョスに代えてFWウィリントン・アポンザが投入されると、好転の兆しが見え始める。アポンザが1トップに入ったことで中島のポジションはトップ下となり、左右に動ける範囲が広がったことで、プレーの幅もボールに絡む回数も格段に増えた。

 そして78分には味方からのスルーパスに抜け出してGKと1対1になるビッグチャンスも。シュートはセーブされてしまったが、中島にとってポルティモネンセでのベストポジションがトップ下であると示すには十分な場面だった。

 今季のポルティモネンセはシーズン序盤から主に4-3-3を採用して戦ってきた。中盤にはセントラルMF気質の選手を3人並べ、中島が復帰するまでのリーグ戦8試合で4勝2分2敗と順調に勝ち点を積み重ねてきていた。昨季は残留争いに巻き込まれ、18クラブ中14位で終えていたことを考えれば上々の滑り出しと言える。

 そんな中、あえてシステムに微調整を加えてまで負傷明けの背番号10をチームに組み込もうとしている。パウロ・セルジオ監督が中島の能力を高く評価しているのは間違いなく、今後は攻撃面においてより重要な役割を任せていく心算なのだろう。

 ベレネンセス戦に勝利した後、パウロ・セルジオ監督は地元メディアに対し「中島はブラガ戦ですでにいい兆しを見せていていて、チームを助けてくれる非常に高い質を備えた選手だ」と語った。強豪国の代表クラスが揃うポルトでは定位置をつかみきれなかったが、ポルティモネンセにおいて中島のクオリティは群を抜いている。ならば、それを活かさない手はない。

 また、中島自身のプレーにも徐々に変化が生まれてきている。

 これまでならボールを受けるために自分のポジションを捨て、ディフェンスラインの手前まで下がっていく場面が頻繁に見られた。そうすることでビルドアップ面では助けになるが、組織のダイナミクスを逸脱した個人プレーによって孤立し、相手に囲まれて簡単にボールを失ってピンチを招くことも多かった。

 さらに言えば、中島が自分のポジションを離れることで、中盤と前線のつなぎ役がいなくなり、肝心のチャンスシーンで攻撃の停滞を招くことにもつながっていた。システマチックかつ攻守に献身的なチームプレーが求められるポルトに馴染めなかったのも、戦術的柔軟性の乏しさが大きな理由だっただろう。

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