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日本代表、新システム「4-3-3」で2連勝。それでも課題山積、連係の熟成が「全然」なワケとは?【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by JFA

守田英正
【写真提供:JFA】



【日本 1-0 ベトナム カタールW杯アジア最終予選】

 カタールワールドカップのアジア最終予選が11日に行われ、日本代表はベトナム代表に1-0で勝利を収めた。

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 これまで「負け」と「勝ち」が交互にきて2勝2敗と苦しんでいた日本にとって、2連勝は今回の最終予選で初めてのこと。ようやく3勝2分と勝ち越し、ワールドカップ出場権を自動で獲得できる2位以内に1ポイント差まで肉薄している。

 森保一監督は10月のオーストラリア戦と同じ「4-3-3」を採用してベトナム戦に臨み、2連勝。新システムは順調に機能しているように見える。

 だが、中盤でキーマンとなりつつあるMF守田英正は、組織の熟成について「全然だと思います」と否定的な見解を示す。「選手の特長を理解しつつも、システムを超える動き出しがない。一の矢しかない状況が続いていて、単調になってしまうところだったり。二の矢、三の矢っていうのがまだない」と課題を明確に指摘する。

 実際、ベトナム戦では日本が主導権を握って試合を進めながら、90分の中でプレーに緩急をつけられずバタバタ感のある時間帯も長かった。チャンスを生み出しながら追加点を決めきれなかったことも、多くの選手が悔やんでいた。

 森保監督が「4-3-3」を継続した理由として、選手たちがオーストラリア戦で得たポジティブな感覚と結果、そして試合内容による影響も考えられる。しかし、今回に関しては移動中のトラブルによって11選手のチーム合流が遅れ、前日練習しか準備するタイミングがなかったという、戦い方を大きく変えづらいシチュエーションでもあった。

 前日の公式練習から本格的に合流したDF吉田麻也も、指揮官が「4-3-3」を採用した背景について「もちろん、1つはこの間(のオーストラリア戦)がよかったのはあるでしょうね。ただ、(戦い方を)擦り合わせる時間が少なかった分、あまりいじらない方がよかったという判断があったんじゃないかなと僕的には思います。前回のいいイメージのまま、正直、練習時間が少なすぎて、(システムを)いじくる術がなかったのかなと思いますね」と分析する。

 ただ、引き続き結果が出ている。また、満足に連係を確認する時間がなかったにもかかわらず、選手たちは手応えを得られていそうだ。課題として言葉に出てくる要素は、全く改善の見込みがないような深刻なものではない。例えば、守田は中盤インサイドハーフの視点で次のように「4-3-3」の成果と課題を指摘する。

「真ん中の3人がお互いにプレースタイルが似ていて、補完しながらポジションを取れる、カバーし合えることで、攻守ともにいい働きかけができていると思うんですけど、逆にここぞというときは、ターンして、推進力を持って、ファウルをもらいにいくプレーだったり、相手の前に入るプレーが必要になってくると思います。

ボールを奪われないような持ち方だったり、パスの入れ方を3人ともがやっちゃっているのが逆にアンバランスかなと思っていて。少し力ずくでこじ開けにいくようなプレーだったりが必要だと思います」

 一方、中盤アンカーを務めていたMF遠藤航も、守田と似たような点を課題として指摘する。

「押し込んだときとかに、僕と(田中)碧と守田が中盤に3人いると、誰がそこ(ゴール前)に入っていくのか。ボールを動かす感覚でいうと別に悪くはないと思うので。3人の関係性でボールをいい形で動かせると思うんですけど、最後のクロスに3人のうち誰が入っていくのか。前に枚数をかける意味では、ちょっと物足りない部分もあるのかなというのは、話し合っています」

 あえてバランスを崩し、リスクを背負ってでも思い切りよくゴールに向かっていくような姿勢やタイミングをどこに作るのか。そして誰がその役割を担うのか。とはいえ、この課題が見えていれば改善の余地は多分にある。まだ「全然」な連係が深まってくれば、自然と最適なバランスが見つかっていきそうだ。

 16日に予定されているオマーン戦までは4日間ある。試合開催地であるオマーンの首都マスカットに移動してから1日ないし2日はリカバリー中心になっても、戦術の確認に2日間以上使えるのは非常に大きい。2連勝した流れで「4-3-3」を継続するなら、連係の確認やイメージの共有を進めるために十分な時間を取れるだろう。

 下位を引き離し、上位に食らいついていくためにも落とせないオマーン戦に向けて、新たな顔を見せはじめた森保ジャパンのさらなる進化に期待したい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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