フットボールチャンネル

バルセロナはとことん舐められていた。バイエルン戦に続く屈辱、もはや恐れられる存在ではない【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

“らしさ”を失った



 実際、試合中にバルセロナは、なかなかオサスナのハイプレスをパスワークで剥がしていくことができなかった。かつて“ティキ・タカ”と呼ばれたテンポの良いパス回しは鳴りを潜め、後方からのビルドアップに苦労した。

 17分には、ハイプレスを掛けられたCBジェラール・ピケが戻したボールを、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンは右のCBロナルド・アラウホに繋ぐのではなく、ロングボールを蹴って、中盤でオサスナに回収されてしまう。この場面でテア・シュテーゲンが“蹴る”という行為を選択したことからは、バルセロナのアイデンティティが失われつつあるようで、何よりチームとしての“自信”が失われているようだった。

 12分にニコ・ゴンサレスが裏に抜け出して先制はしたものの、直後の14分にセットプレーで失点。全体が間延びして不安定なバルセロナは、1-1で前半を折り返す。選手同士の距離に統一感がなく、「インテンシティ」を保てない様子は、ロナルド・クーマン監督が率いていた開幕戦の頃に逆戻りしたようだった。

 後半に入って、49分にカウンターから1度は勝ち越しに成功したが、53分の場面ではパスワークがズレてしまい、59分にピケは蹴ってしまうなど、所々で“らしさ”を失ったバルセロナ。もちろん何が何でも蹴ってしまうようなことはなく、基本的にはボールを支配して攻めようとするのだが、ポゼッションを高めて決定機を創ることができない。

 それどころかオサスナは、あろうことかバルセロナ相手にボールを保持して攻撃してきたのである。くどいようだが、バルセロナ相手に負けている状況にもかかわらず、ボールポゼッションを高めて攻撃してきたのだ。

 66分には、オサスナに右→左と繋がれてさらにサイドチェンジで揺さぶられ、右の高い位置で奪い返されるなど、一時的にではあっても、試合の主導権を敵に握られてしまう。今のバルセロナだったら、俺たちでもドローに持ち込める――。そう考えていたからこそ、オサスナの選手たちは果敢にボールを保持してきたのだろう。

 CLでバイエルンに叩きのめされ、シャビ監督就任による浮かれた熱を一蹴されたバルセロナは、リーガの中堅クラブに、とことん舐められていた。そして実際に87分、チミー・アビラにミドルを突き刺され、ドローに持ち込まれてしまう。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top