フットボールチャンネル

原口元気と柴崎岳、今こそ真価を示す時。サッカー日本代表戦士としての矜持、「僕ら世代の最後の大きな課題」W杯8強達成のために

text by 編集部 photo by Getty Images

サッカー日本代表 最新ニュース

原口元気 川島永嗣 柴崎岳
【写真:Getty Images】



原口元気と柴崎岳、揃ってベトナム戦先発へ

 サッカー日本代表は29日、カタールワールドカップアジア最終予選の最終戦でベトナム代表と対戦する。



【日本代表 W杯最終予選はDAZNで全試合生中継!
いつでもどこでも簡単視聴。4月17日まで初月1ヶ月無料お試し実施中】


 今月24日のオーストラリア代表戦に2-0で勝利してワールドカップ出場権を獲得した日本代表は、ベトナム戦でスタメンを大幅に入れ替える見込み。アジア最終予選で出番を減らしていたMF原口元気やMF柴崎岳にもチャンスが与えられることが濃厚だ。

 彼らがチーム内でいかに重要な存在だったか。キャプテンのDF吉田麻也は26日に行われた記者会見の中で、「もちろんポジションを奪われる選手も出てくるでしょうし、それは歳が上になればなるほど受け入れ難くなってきて、自分がどう振る舞うか、非常に難しいと思います」と述べつつ、「ベテラン」たちの振る舞いについて次のように言及していた。

「柴崎選手、原口選手、川島(永嗣)選手もですけど、ベテランたちが練習から、そしてベンチでの振る舞いを若い選手に見せることによって、同じように出場時間の短い若い選手たちが、どう振る舞わなければならないかを自然と学ぶことができたり、このユニフォームを着て日の丸を背負って戦うことの意味を理解できるようになったりすると思います。そういう意味で、経験ある選手たちに非常に助けられたと思いますし、非常に良いチームだなと感じています」

 ロシアワールドカップのラウンド16でベルギー代表に敗れ、のちに“ロストフの14秒”とも呼ばれるようになった屈辱を味わった選手たちの日本代表における存在感は、徐々に薄れているように見える。MF田中碧やMF守田英正、MF伊東純也らの台頭はチームにとって非常に喜ばしいことだ。しかし、一方で長年日本代表を引っ張ってきた原口や柴崎といった経験豊富な選手たちの価値は、吉田の言葉の通り、決して損なわれていない。

 原口は練習で誰よりもハードワークし、強度高くボールに食らいつき、声でもチームを盛り上げる。「現実として僕はこの予選で多くの出場機会はなかったですけど、どうやったらチームがワールドカップに行けるかを考えて行動していました」と原口は語る。

「エゴを消していたというよりも、使うタイミングですよね。自分のやりたいことと、チームがやらなければならないことを、どのタイミングでチョイスしていくか。多くの経験をしてきて、このタイミングで出す、出さないというのがうまくなってきたと思います。

もし次の試合にチャンスがあるとなれば、そこは自分が表現したいプレーを表現する場だと思っていますし、ここからが勝負だと思っているので。ワールドカップまで半年くらいですけど、悔いが残らないように、ポジショ争いに勝ちたいなと思います」(原口)

 柴崎は静かに闘志を燃やし、試合さながらの激しさで練習に勤しみ、背中でチームを引っ張る。だが、1月・2月シリーズは森保ジャパンが発足して以降、自身が招集された活動で初めて2試合連続の出番なし。24日のオーストラリア戦でもピッチに立つことはなかったが、その悔しさを胸に押し込みながら、淡々と準備を進める姿が印象的だった。

 報道陣に公開された練習の後、柴崎は居残りでロングパスやミドルシュートを蹴ることが多い。相棒を見つけるでも、誰かと話すでもなく、黙々と。1本1本に魂を込めて、気持ちの乗ったキックを丁寧に蹴っている。その時の柴崎がまとう求道者のオーラには、見る者を威圧するような覇の力を感じる。

「(ワールドカップ出場決定で)つないできた歴史をまたつなぐことができて、安心感と達成感……個人的には達成感より安心感の方が多かったような感覚がありました。試合に出れずに終わりましたけど、ベンチから日本代表の戦いぶりを見て、十分勝利に値する、突破に値するパフォーマンスだったんじゃないかなと思っています」(柴崎)

 いつも通り表情を変えずワールドカップ出場決定を振り返った柴崎だったが、淡々とした言葉の裏には受け継いできた歴史の重みと責任感が透けて見える。4年前に先輩たちから引き継いだ「ワールドカップベスト8進出」という目標を何としてでも自分たちの世代で成し遂げたいという思いは、彼の胸の内に刻まれているはずだ。

「代表チームでプレーできることは常に誇りに思っていますし、その中でピッチに立ってプレーできる、いいプレーをする、チームの勝利のためにプレーし続けるというのは変わりなく続けていきたいなと思っています。

ワールドカップ出場が決まって、近々相手も決まって、それによってメンバー構成にも影響してくると思うので、(本大会は)いろいな想定をしたメンバーになるとは思いますけど、またそのメンバーに入っていけるように個人的には努力していきたいなと思っています。

僕個人の思いはありますけど、一番はやはり日本代表が成果を残し続けていくのが一番の幸せというか、目指すべき姿だと思っているので。そこに貢献していけるように、いち個人として頑張っていきたいと思っています」(柴崎)

 いくら出番が減ろうと、目標に向かって変わらず努力し続ける姿勢は、確実に周りにもいい影響を与えている。新しい選手を呼べ! という外部からの声はあるかもしれないが、原口や柴崎、あるいは川島といった選手たちを簡単に外せない理由は、彼らが身を以て示しているのである。

 原口は言う。

「反骨心が出てくるシチュエーションはすごく得意だし、好きなので。今の状況は個人的にすごくいいなと感じていて、チャンスがくればいいパフォーマンスができるんじゃないかと思います。ワールドカップまで数試合しかテストマッチができないですけど、必ず自分自身を表現できるチャンスが来ると思っていますし、このタイミングが勝負。その数試合に僕自身、全てを賭けて、ワールドカップに対してもうめちゃくちゃ燃えているので、必ずチャンスをものにできるように、(カタールでの)本番も出られるように頑張ります」(原口)

 柴崎も「1人のプレーヤーとして試合に対して毎日最善の準備をしていくというところは変わりなくやってきたので、あとはプレータイムを得られた時にしっかりプレーするだけ」と述べつつ、ワールドカップベスト8という目標を達成するための戦いに向けてイメージを膨らませている。

「(ワールドカップは)アジア予選とは打って変わって、世界の強豪国しか集まらない特殊な大会で、前大会も相当厳しい、突破できなくてもおかしくないグループに入って、本当に数少ないチャンスや可能性をモノにしたから、ベスト16で試合ができた。

本当に厳しい戦いがそこにあるんだと自覚するとともに、もちろんチームのオン・ザ・ピッチの部分は大事ですけど、オフ・ザ・ピッチの部分でのチームマネジメントも大事になってくるんだと。チームの勢いやコミュニケーション、日々の1つひとつの空気感が試合に影響する部分もある。ピッチの上だけでなくてピッチ外も1つの戦いですし、自分たちの戦い含めて、これからも代表期間を過ごしていければいいかなと思います」(柴崎)

 ただ、最終的な選手の評価はピッチ上で決まるもの。日々の準備の成果として、ベトナム戦でどんなパフォーマンスを披露するかは原口や柴崎の未来を大きく左右するかもしれない。ロシアでの忘れ物をカタールに必ず取りにいく。その強い決意をプレーに落とし込んで、改めて自分たちの価値を証明してもらいたい。

「世界を相手にどうやって勝つか。4年前に負けたところをどう超えていくかというのは、僕自身も大きな課題として、絶対にそこに向かっていきたいと思っています。まだ4年前の記憶はずっと心の中にあるので、それだけを考えて代表活動をやってきましたし、日本代表がもう1つ上のステージに行くためにそこ(ベスト16)を突破することが、僕らの世代の……最後の大きな課題かなと」(原口)

 ロシアワールドカップの苦い記憶は、自分たちの手で払拭しなければならない。その使命を偉大な先輩たち託された原口や柴崎が、それぞれの立場で逆境に直面した時に、それをどう打ち破るのか。彼らが“ロストフの14秒”を乗り越えるための戦いは、まだ終わっていない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top