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サッカー日本代表は“いつメン”がいないと弱いのか? ベトナム戦先発で三笘薫も実感「このプレーでは強豪には難しい」【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by Shinya Tanaka

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三笘薫
【写真:田中伸弥】



日本代表、ベトナム戦後半の選手交代でわかったこととは?

【日本 1-1 ベトナム カタールW杯アジア最終予選】

 カタールワールドカップアジア最終予選の最終戦が29日に行われ、サッカー日本代表はベトナム代表と1-1で引き分けた。



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 24日のオーストラリア代表戦からスタメンを9人変更して臨んだ日本代表だったが、 前半はなかなか思うように機能せず。20分にコーナーキックから失点し、苦しい展開となってしまった。

 そこで森保一監督はハーフタイム明けから早々と手を打ち、MF旗手怜央に代えてMF伊東純也を投入。その後、61分にはMF南野拓実、MF守田英正、MF田中碧をピッチに送り出し、システムも4-3-3から4-2-3-1に変更して攻勢を強めた。

 早い時間から動いて積極的に交代カードを切り、システムも変えた意図について「前半もシステム上で何か問題があってうまくいっていないとは捉えていませんでした」と語る指揮官は、次のように明かす。

「後半ダブルボランチにして4-2-3-1に変えた中で、後ろのバランスを安定させて、そして右が伊東、左が三笘(薫)ということで、サイド攻撃の起点になるところでダブルボランチからサポートに行けるように。攻撃力を上げるためと、よりスムーズに周囲のサポートに行けるようにと考えました」

 実際、守田と田中がダブルボランチを組むようになってから日本代表のビルドアップは飛躍的に安定感を増し、徐々に運動量が減っていたベトナム代表を押し込んで試合を進めることができた。

 南野のハンドによって取り消されてしまったが、田中がゴールネットを揺らして一時は逆転かと思われる場面も作った。「自分と守田くんが入ってから30分間でやれることはやったのかなと思います」と、田中は語る。

「基本的に押し込む形になると思うので、ダブルボランチになったとしても、1人余ってしまう。そこはどちらかと言うと守田くんが(後ろに)残ることが多かったですけど、そこは任せつつ、自分の立ち位置に関しても、(相手選手の)間に立つときとサイドに出るときと、あとは中継点になるときと、そこの組み合わせを工夫しながらやっていました。アンカーが中心になるので、守田くんがやりたいことを自分がまた周りに広げていくような感覚でプレーしていたつもりですし、サイドから攻めるのか、中央から行くのかの判断も含めて意識していました」

 そう語る田中と、コンビを組んだ守田の2人がチームに安定感をもたらしたのは間違いない。「自分と守田くんが入ったときに、どう攻めていくのか、動きや立ち位置を示しながら、いろいろな選手のやりたいプレーを出させるようにこだわっていたので、それが結果につながらなかったのは残念」と田中は語るが、改めて彼らの価値の高さは証明された。

 一方で、懸念されるのは“いつものメンバー”がいなければ日本代表は弱くなってしまうのかという点だ。昨年10月のオーストラリア代表戦から4-3-3が採用され、田中や守田はそこから主力に定着して日本代表を引っ張ってきた。

 オーストラリア戦から6連勝でワールドカップ出場権を獲得できたのはチーム全体の成果ではあるものの、システム変更や新たな選手の台頭が大きな要因になっていたのは事実だ。

 ベトナム戦でA代表初先発のチャンスをつかんだMF三笘薫は、「自分のプレーで推進力を出せたところはありますけど、その分、後ろのケアだったりオープンになるところはある。そういったところでスタメンが少ないというのも分かります」と力不足を痛感しているようだった。

 これまで途中出場が2試合あり、オーストラリア戦では終盤からピッチに立って2得点で日本代表を勝利とワールドカップ出場権獲得に導いたドリブラーは、ベトナム戦でも確かな存在感を発揮した。何度も左サイドを単独で突破してチャンスを作ったが、結果には結びつけられなかった。

「ワールドカップが決まった状態だったのはよかったですけど、決まっていない状態でこういうプレーをしてしまえば、本当に難しくなりますし、本当に強豪になった時に難しい」という三笘の言葉には、ベトナム戦に先発した他の多くの選手も共感するのではないだろうか。

「(ベルギーでは)1対1の勝負や、当たりの違い、球際の数は日本より多いので、成長したところもありますけど、90分通してのタフさはまだまだ全然足りない。そこを求めてやっていくところもありましたけど、今日のプレーでも、スペースがなくてもどんどん仕掛けられるところを作ったり、1人で打開しないといけないと思いますし、そこは課題かなと思います」(三笘)

 結論は、ベトナム戦に先発した選手たちは序列を覆すようなパフォーマンスを見せられなかったということになるだろう。新たな競争の始まりを象徴する選手の登場も期待されていたが、まだ“いつものメンバー”を脅かすような存在はごくわずか。ワールドカップ本大会に向けてチームの総合力をもっと上げていかなければいけないと全員が自覚しているに違いない。

 キャプテンのDF吉田麻也は言う。

「(ワールドカップ本大会まで)もう時間がないので、今から急激にすごい選手が出てくるのは考えづらい。今あるベースにどれだけ積み上げられるか、かなと。もちろん、みんながスタメンで出たいと思いますけど、やっぱりチームなので、 23人いる中でいろいろな武器を手にしておかないといけない。それはスペースが空いた時の三笘選手なのか、パワープレーで押し込まれた時の植田(直通)選手なのか、いろいな状況の中でいろいろなピースを監督が手にしていなければならない。

みんなが特徴出して、『これくらいできるんだ』『これくらいのポテンシャルがあるんだ』『こういう時はこいつを使いたいな』と思うような結果を出さなければ。もちろん、スタメンが入れ替わることもあると思いますけど、まずは監督に使ってみたいと思わせないといけないと思います」

 ワールドカップでベスト8以上という目標を達成するための道のりは、まだまだ続く。現時点で目的地までの距離は遠いと言わざるをえないだろう。出場権獲得で浮かれている場合ではない。ベトナム戦は日本代表選手たちが改めて気を引き締めるためのきっかけを与えてくれた、貴重な機会と捉えて前に進むべきだ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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