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守備だけではない。なぜ前田大然はセルティックで評価されるのか? シュート0本でも遂行した決定的な仕事【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 舩木渉 photo by Getty Images

相手のキーマンを封じ込めた猛プレス



 しかし、レンジャーズ戦の前田が各方面から高い評価を得た理由は別のところにある。『ザ・セルティック・ウェイ』のエディター、ショーン・マーティン氏による寸評の冒頭を引用すると、その理由がよくわかる。

「左サイドでスタートし、(レンジャーズの右サイドバックを務める)ジェームズ・タヴェルニエに早々と、ボールを持っても時間がないという警告を与えた」

 前田が対面したのはレンジャーズのキーマンだった。キャプテンの腕章を巻くイングランド人DFは、今季のリーグ戦で12アシストを記録している。右サイドバックながら積極的に攻め上がって高精度のクロスをゴール前に供給してくる、チャンスの源泉だ。

 セルティックとしてもタヴェルニエをいかに封じるかをレンジャーズ攻略の鍵の1つと捉えていたに違いない。前田は序盤から対面する相手のキーマンを執拗に追い回し、攻撃参加を制限していった。

 そして、効果はタヴェルニエのスタッツにも表れた。

 30歳の右サイドバックが前節のダンディーFC戦で20本のクロスを放ち、そのうち5本がシュートチャンスにつながった。サッカーの様々なデータを提供している『FOOTMOB』によれば、「アシスト期待値」を意味する「xA」という指標では「0.48」を記録していた。

 一方、今回のセルティック戦でタヴェルニエが放ったクロスは17本。そのうちシュートにつながったのは2本だけで、「xA」も0.29に抑えられた。

 タヴェルニエにはタイミングとスペースを見つければ、躊躇なくゴール前にクロスを上げてくる。それもあってダンディーFC戦とセルティック戦でクロスの本数自体に大きな変化はないが、成功数や成功率が下がっているのは、前田のディフェンスやボール奪取後のカウンターを警戒したことによる効果、しつこく妨害を受けた影響と見ていいのではないだろうか。

 セルティックで輝くスキンヘッドの日本人アタッカーは、守備だけで輝いたわけではない。猛烈なプレスバックで4回のボールリカバリーを記録し、奪った後はゴール前まで出ていって決定機にも絡んでいる。ドリブル成功数4回はチーム最多で、ボールを前に運ぶ推進力も際立っていた。

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