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守備だけではない。なぜ前田大然はセルティックで評価されるのか? シュート0本でも遂行した決定的な仕事【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 舩木渉 photo by Getty Images

どんな時も落ちない前田大然のプレー強度

前田大然
【写真:Getty Images】



 そして、現地で論争を巻き起こしているのが、まさに前田らしさがゴール前で発揮された場面だ。カーター=ヴィッカースの逆転ゴールが決まる直前の40分、速攻の流れでペナルティエリア内でGKと1対1になった前田はレンジャーズの守護神アラン・マクレガーと交錯して倒れた。

 英『スカイ・スポーツ』で解説を務めた元セルティックのMFスティリアン・ペトロフ氏も、「もし私なら(PKを)主張するだろう」と述べたという。結局、主審はPKを与えず、ペトロフ氏もその判定を支持するようだが、36分にもGKと1対1のチャンスを作った前田がシュート0本でも決定機に関与していたのは疑いようのない事実。90分間を通して運動量が衰えることのない攻守にわたるエネルギッシュなプレーが、セルティックの逆転勝利を大きく後押しした。

 両チームにとってオールドファームがただのダービーマッチでないのは、歴史を見ても明らか。そのうえ試合展開も他のクラブとの対戦時とは全く違うものとなり、ピッチ上で存在感を発揮するには普段以上に極めて高いインテンシティが要求される。

 セルティックの場合、ボール支配率は多くの試合で60%以上、あるいは70%を超えることもあるが、今回のレンジャーズ戦では39%に抑え込まれた。さらにチームとしてパス成功率72%、パス成功数241本というのは、アンジェ・ポステコグルー監督にとっても不本意だっただろう。

 それでも最終的に勝利をつかみ取ることができたのは、選手たちが攻守に高い強度が求められる展開に耐え切れたから。前田も、いわゆる格下の相手だけでなく、レンジャーズのような互角以上の難しさのある相手にも持ち味を発揮できることを示した。

 セルティックの左サイドバックを務めたDFグレッグ・テイラーも「前田とギオルゴス・ジャコマキスが疲れ知らずのエネルギーを持って精力的に働き、それからリエル・アバダが登場する(76分にジョタとの交代で途中出場)。これこそチームとしてパーフェクトなパフォーマンスであり、ここにいる誰もが彼らの努力に満足しているはずだ」と、試合後のインタビューで語った。

 ポステコグルー監督も「(アウェイゲームで)全てが相手にとって有利な状況で、我々は逆転し、チームとして真の姿を示すことができた。本当に素晴らしかった。このチームは過小評価されているかもしれないと、私はずっと言い続けてきた。彼らの努力を誇りに思う」と選手たちを称える。

 シュート0本でもチームを勝利に導く決定的な働きができる。3試合連続ゴールこそ逃したものの、前田が宿敵レンジャーズ戦で見せたパフォーマンスは、彼のチームプレーヤーとしての価値を改めて証明するものだった。

(文:舩木渉)

【了】

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