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ポステコグルー監督はいかにセルティックを再建したのか? 古橋亨梧や前田大然、リーグ優勝につながった新戦力躍動の理由【分析コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ポステコグルー監督が1年目から成功できた理由

古橋亨梧
【写真:Getty Images】



 この11人のうち、昨季もセルティックでプレーしていたのはテイラーとマクレガーの2人だけ。古橋ら日本人選手たちをはじめ、他はポステコグルー監督就任以降に加入した新戦力ばかりになっている。

 ポステコグルー監督にとって来日1年目だった2018シーズン、横浜F・マリノスは残留争いに巻き込まれるなど苦しい戦いを強いられた。セルティックでもマリノスでも同じようなサッカーを導入したのに、当時と比較して「1年目」の結果が全く違った要因の1つにオフシーズンの慣習の違いがあるのではないだろうか。

 マリノスは2017年12月中旬に2018シーズンからのポステコグルー新監督就任を発表した。しかし、日本ではシーズン終了の12月上旬に次のシーズンの編成がほぼ固まっている。その時点でどの選手が翌年もマリノスでプレーするのか、誰が退団するのかなど、新たに誰を獲得するのかなど、未発表でも決定済みな要素が多い。

 年をまたいでの補強は少なく、J1クラブなら新チームが始動する1月中旬の段階でそのシーズンに所属する選手のほとんどが揃った状態になっている。実際、ポステコグルー監督がマリノスで仕事を始めたタイミングで加入していた新戦力はFW大津祐樹やMFユン・イルロク、レンタルから復帰したFW仲川輝人とMF和田昌士、そして高卒ルーキーの5人だけだった。

 つまりマリノスでの1年目が始まる段階で補強にポステコグルー監督の意思が介在する余地はほどんとなく、理想のチームを作る時間も十分になかったわけである。

 シーズン開幕後にFWオリヴィエ・ブマルが加入し、2018年夏にはDFチアゴ・マルチンスやDF畠中槙之輔、DFドゥシャン、MF久保建英がやってくる。彼らのその後がどうなったかを見るだけで、監督の望む補強の効果がどれほど大きかったかは理解できるだろう。

 オーストラリア人監督就任2年目の2019年、適応力の高い戦力をさらに加えて攻撃的な戦い方に磨きをかけたマリノスは15年ぶりのJリーグ制覇を成し遂げた。

 一方、欧州では新シーズンが始まっても移籍市場閉幕のギリギリまで選手の動きがある。ポステコグルー監督が就任した6月はまだまだ多くのクラブが動き始めの段階で、自らの望む戦力を確保しながら、チームに新しい戦術を植えつけるために約3ヶ月間もの十分な時間があった。

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