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セリエA 2年前

「自分に殺意すら覚えた」吉田麻也が苦んだ末に掴んだ信頼。サッカー日本代表主将が迎えた岐路、「一番の願い」とは?【21/22欧州日本人総括コラム】

シリーズ:21/22欧州日本人総括コラム text by 舩木渉 photo by Getty Images

前半戦は絶対的なレギュラーだったが…

吉田麻也
【写真:Getty Images】



 確かに表面だけを切り取れば内紛だと捉えることもできよう。だが裏を返せば、チーム内に在籍8年目でチーム内に絶対的な影響力を持つキャプテンに対して自分の意見を主張できる選手がいることを証明しているとも言える。

 それが吉田だった。33歳の日本人センターバックには、クアリアレッラに対してモノ申すだけの主張や気概、人望があった。もし周りの選手たちから相応のリスペクトを集めていなければ、圧倒的な実績と経験によって尊敬を集めるキャプテンに対して反発したとて、チーム内で孤立してしまうだけだ。

 残留争いで誰もがフラストレーションを溜めている中、勝てたはずの試合を落としたことで小さな諍いが起きるのは自然なこと。吉田とクアリアレッラのように、ピッチ上でお互いに溜め込んだイライラが爆発してしまうほど、とにかく苦しいシーズンだった。

 サンプドリアは序盤から勝ち星を積み上げられず、クラブが財政難や不振にあえぐ中で昨年12月に当時オーナーだったマッシモ・フェレーロ氏が金融犯罪に関わった容疑で逮捕され、直後に辞任する。それにともなうクラブの身売り問題にも振り回され、ピッチ内外で調子を取り戻すきっかけをつかめないまま、今年1月17日にロベルト・ダヴェルサ監督を解任した。

 吉田はシーズン開幕戦からDFオマール・コリーとのコンビでリーグ戦ほぼ全試合に先発起用されるなど、レギュラーの座を確固たるものにしていた。そんな中で痛恨だったのは、年明け早々の試合で負った右太ももの怪我だった。

 今年1月6日に行われたセリエA第20節のカリアリ戦に先発出場した吉田は、18分にサンプドリアの先制ゴールをアシスト。だが、後半開始早々に右太ももを痛めて交代を余儀なくされ、全治1ヶ月と診断された。

 結果的に2月下旬まで復帰がずれ込み、その間にサンプドリアでは監督交代があり、日本代表でもカタールワールドカップアジア最終予選の重要な2試合を欠場することになってしまった。自らのインスタグラムでは「このタイミングで怪我してしまった自分に殺意すら覚えました」と、大事な時期にクラブでも代表でもチームの力になれないもどかしさを綴っていた。

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