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サッカー日本代表戦はなぜ「塩試合」になったのか?想定内の膠着が持つ落とし穴【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by JMPA

切り札を生かし切れないサッカー日本代表の拙攻



 後半から日本代表は2人を交代する。ウイングバックに適性がない長友佑都に代えて伊藤洋輝、上田綺世に代えて浅野拓磨。相手が引けば裏のスペースはあまり使えない。そうなると攻め手はサイドからのクロスボールしかないのが現状である以上、中央に高さと強さのあるFW(上田)が必要になる。後半から浅野を投入したのは、さすがにコスタリカ代表も前に出てくるという読みだろう。

 ところが、コスタリカ代表は全く前へ出てくる気配がない。日本代表の攻撃が続き、立ち上がりに守田英正と浅野のパス交換から守田がシュート。さらに浅野が左サイドを駆け上がってのクロスからのこぼれ球を遠藤航がシュートとゴールへ迫る。

 守田と浅野のパスワークからのフィニッシュは、この試合であった2回の中央突破の1つだった。浅野にパスをつけた守田は自らのパスを追うようにサポート、これで瞬間的に2対1を作れる。この場面では浅野と入れ替わる形になった守田がシュートしたが、相手が圧縮してくれば周囲は空く。

 やろうと思えばこうしたパスワークもできるのにそのアイデアをあまり共有できているようには見えず、中央突破に恐さを見せられなかったのはメインのサイド攻撃にも影響があったかもしれない。

 切り札・三笘の登場は62分。しかし、三笘に勝負させる状況をなかなか作れない。中央に恐さがないのでマンマークで対応されていてDFと三笘との距離が近かった。三笘ぐらいしか崩すアイデアがないのに、そこまでの導線を確保できていないのも残念だった。

 67分に伊東を投入して勝負に出る。スペイン代表相手に勝ち点をとるよりも、コスタリカ代表に勝利するほうが現実的なので、リスクを負っても攻撃にリソースを割くのは理にかなっている。しかし、これで勝てなかっただけでなく敗れてしまったのだから結果的に賭けに負けた形になってしまった。

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