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サッカー日本代表戦はなぜ「塩試合」になったのか?想定内の膠着が持つ落とし穴【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by JMPA

想定内の膠着状態が持つ落とし穴


【代表撮影 JMPA/渡部薫】



 日本代表の守備はほとんど崩されていない。失点はミスが重なったことで起きた自滅である。

 ドイツ代表戦ではほぼなかった自陣でのパスミスが散見された。直接的には吉田麻也がフワリとしたパスを中央の守田に送ったのがズレて、ボールを奪われたのが原因だ。ただ、その10分ほど前にも吉田は自陣でパスミスをしていた。また、失点の直前にはジョエル・キャンベルが余裕のある技巧を披露するなど、コスタリカ代表が少しリズムをつかんでいて、逆に日本代表には危険な時間になっていた。守備を固めてこの瞬間だけを待っていたとすれば、コスタリカ代表は相当に辛抱強い。

 先制された後、ようやく三笘の個人技から2つの決定機があり、この試合2回目の中央突破もあったがどちらもゴールならず。

 森保一監督のチームは僅差勝負を容認している。とくにワールドカップとなれば大半の試合は僅差であり、膠着させれば格上にも勝ち目がある。この試合の前半も膠着を想定内とするいわゆる「塩試合」だった。ただ、この戦い方は優勢な試合を落とすことも起こりうる。引かれた場合に崩せないという弱点は変わらず、さほどハイプレスをしてこない相手にミスがらみの失点で敗れてしまったのは不運ではない。

 次のスペイン代表はハイプレスがほとんど通用しない相手だ。ドイツ代表戦と戦い方はほぼ同じになるが、その点が違う。ミドルゾーンで奪ってのカウンターを狙いたいが、もっと押し込まれる時間帯が続くと想定される。そのときに前線で収められるFWがいれば押し返すこともできるが、そうしたFWを日本代表は持っていない。

 そうなると、ディフェンスラインの裏を開けてプレスの密度を上げる、あるいはマンツーマンで決闘を挑むなど、大敗の危険はあってもどこかでリスクを負った戦い方が必要になるかもしれない。ただ、基本的にはドイツ代表戦と同じなのでやりにくさはないはず。コスタリカ代表戦よりも日本代表の良さが発揮される試合を期待したい。

(文:西部謙司)

【了】

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