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Jリーグ 1年前

北京五輪世代が日本サッカーの今後を左右する。切り拓いた多様なキャリアの行く末【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

貴重な経験を日本サッカーに還元できるか



 これだけ多種多様なキャリアを築いてきたことが北京世代の強みであり、魅力だ。ちょうど2000年代後半から2010年代前半にかけて日本人選手の海外移籍環境が整い、続々と外に出ていけるようになったことも彼らの背中を押したのだろう。

 それに加えて、彼らには「本気でW杯優勝を目指す」と公言するような鼻息の荒さがあった。だからこそ、異国へのチャレンジ精神は人一倍高かった。「人と違ったキャリアを構築したい」という意識は本田圭佑からも色濃く感じられる。

 その分、紆余曲折も多かったに違いない。ギリシャやクロアチアはメディカル面を含めた環境に不備があっただろうし、東南アジアへ行けばクラブやリーグの運営面、気象条件やプレーの難しさなどに直面したはず。給与未払いも経験した者もいるかもしれない。

 そういった中、身に着けたタフさや逞しさというのは、やはり頭抜けている。それは今の日本の若い世代に最も欠けている部分であり、養っていくべき点だ。多彩な道を切り拓いた北京世代にはその重要性をさまざまな形で伝えていってもらいたい。

 ピッチを去った後、全員がサッカー界に残るとは限らない。サッカーから離れて違った業界に転身する人材も出てくるだろう。ただ、積極果敢に挑戦するマインドというのは、全ての物事に共通する部分。新規ビジネスの開拓など新たな世界に歩み出すにしても必要な要素だ。それを持ち合わせている北京世代というのは貴重な存在である。

 今季限りでスパイクを脱いだ槙野や伊野波、本田拓也らには多くの人々をあっと言わせるようなトライを見せてほしいものである。

(文:元川悦子)

【了】

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