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なぜアーセナルは降格圏のエバートンに敗れたのか?簡単ではない優勝への道のり【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

エバートンがアーセナルを攻略した方法



 ダイシのサッカーは古典的な英国スタイルとも言われる。前線に長身の選手を並べてクロスやロングボールを放り込み、高い制空権を活かしてヘディングでゴールを決める。仮にボールが収まらなくても、そのセカンドボールに対して素早くプレッシングを行って高い位置でボールを奪い返す。このスタイルが今のエバートンの選手にマッチしている。

 最前線に入ったドミニク・カルバート=ルーウィンは、アーセナルの両CBに対して空中戦で優位に立ち、ボールを収めて前線で起点となり続けた。仮にここでボールを収められなかったとしてもイドリッサ・ゲイェ、アマドゥ・オナナ、アブドゥライェ・ドゥクレが高い位置で猛烈なプレスを掛け続け、アーセナルのミスを誘発した。

 アーセナルの最終ラインはインテンシティの高いエバートンの前線からの守備に苦戦し、オレクサンドル・ジンチェンコ以外は“らしくない”パスミスが散見され、不用意にピンチを招くシーンもあった。

 また守備時はドワイト・マクニールとアレックス・イウォビの両WGがSBと共にアーセナルのウイングを見る形で守備をし、トップ下のウーデゴールとの連係で仮に彼らが剥がされたとしても、豊富な運動量でピッチ全体をカバーするゲイェが最後までマークにつき、チャンスの芽を摘んでいた。

 そしてこの試合で唯一生まれた得点シーンは、マクニールが蹴ったCKをジェームズ・ターコウスキが頭で合わせたものだった。旧知の中である元バーンリーの選手同士の連係から生まれた決勝ゴールは、彼らを長年指導してきたダイシからすると狙い通りの形だった。

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