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冨安健洋投入でアーセナルは何が変わったのか? 貧弱な守備を蘇らせた方法【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

アルテタが冨安健洋らを投入した意図とは


 失点直後の57分にも自チームの左サイドを崩されていたアーセナルだったが、62分に守田のオウンゴールで同点に追いつく。ここでミケル・アルテタ監督はジンチェンコと代えて冨安を投入した。

 最後にアーセナルベンチが映った61分の時点で冨安はピッチ脇で準備をしていなかったため、アルテタ監督がいつ日本代表DFの投入を決意したかどうかは定かではないが、立て続けに左サイドから崩されていたことを考えると、既に決めていた可能性が高いだろう。

 この場面で冨安に与えられた最重要のタスクは守備時における左サイドの安定だ。その中で同点に追いついた後の投入だったことは幸いだった。というのも、この試合はスポルティングCPホームであり、来週にも満員のファンが集まったエミレーツ・スタジアムでの2ndレグが控えている。アーセナルは2戦合計でスポルティングCPに勝利をすれば良いのであって、この試合を無理に勝ちに行く必要がない。

 そしてアルテタ監督は71分にマガリャンイスとトーマス、エミール・スミス=ロウと、どちらかと言えば守備的な交代を行った。冨安、マガリャンイス、トーマスの3人は、先述した貧弱だったアーセナル守備陣を頑丈なものにするためのカードである。実際に冨安がピッチに立った63分以降に許したシュートはわずか1本しかない。指揮官の意図はすぐにピッチで効果として表れた。

 冨安個人のパフォーマンスにフォーカスすると、相手の右サイドの選手をケアしながらインターセプトやファウルなしでボールを回収し続けた。この試合で日本代表DFが与えたファウルはわずか1、その中で地上戦は5戦5勝とチームの最後尾に安定をもたらした。

 それだけでなく、ファーストプレーの場面では果敢なドリブル突破で攻撃参加し、2度目のボール関与では逆足の左足でピンポイントのクロスを供給とオフェンス面でも存在感をみせた。

 およそ3週間前のマンチェスター・シティ戦でのパスミス、先週末のボーンマス戦では前半で交代と直近は自らの持ち味を発揮できていなかった冨安だったが、この試合での起用を見る限り、指揮官からの信頼は全く揺らいでいなかった。今後も変わらず、重要な局面で出番が訪れるだろう。

(文:安洋一郎)

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【了】

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