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なぜ遠藤航は起用されなかったのか? リバプールが優先した「強さ」と「素早さ」【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

リバプールのアンカーに足りないキャラクター

 もう一つ、途中出場しなかった理由があるとすれば、被カウンター対策に遠藤が向いていないことにある。

 ブライトンがリスクを掛けて打ち合い上等の展開に持っていったことで、時間が経つに連れて両チームの中盤は間延びをした。前半13タッチに留まっていた三笘も、後半におよそ3倍の35タッチを記録したことからもオープンな展開となったことは明らかだ。

 こうした展開で、クロップ監督は73分にジョエル・マティプに代えて、より守備範囲が広くスピードに優れたCBイブラヒマ・コナテを投入。80分にはハムストリングの負傷明けから続けて先発出場していたトレント・アレクサンダー=アーノルドに代えて、ジョー・ゴメスをピッチに送り出した。

 その一方で遠藤の出番は訪れなかった。中盤が間延びをしたことで、守備範囲が狭いマック・アリスターの両脇のスペースをブライトンに使われており、この対策として、遠藤とアルゼンチン代表MFのダブルボランチにするプランもあった。しかし、先述した通り、攻撃面のことを考えると、彼と代える選手はすでにピッチにいなかった。

 仮に遠藤が広い守備範囲であっても単騎で相手の被カウンターを止められるキャラクターだった場合は起用されたかもしれないが、彼もマック・アリスター同様に連動したプレスがない状況で無理が効く守備ができる選手ではない。

 同日に行われたアーセナル対マンチェスター・シティの一戦で輝きをみせたデクラン・ライスや、今夏にリバプールが獲得を狙っていたモイセス・カイセドは、広いスペースや相手に前を向かれても強引にボールを刈り取れる選手である。一方で現在のリバプールには彼らのような”アドリブが効く守備”ができる中盤の選手がいない。

 ワンアンカーのシステムを続けるのであれば、彼らのような守備時に無理が効くプレイヤーを獲得するべきだ。今夏に遠藤を獲得したリバプールだが、本気でタイトル奪還を目指すのであれば、このポジションのアップデートは必須だろう。
(文:安洋一郎)

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