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アーセナルが生み出す“新しい攻撃”。トロサールだからこそ作れる好循環とは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

手詰まりを打開するトロサールの貢献


 このような場面でトロサールの存在がチームの打開策となる。積極的にラインブレイクを狙い、攻撃に奥行き、深みを作り出した。13分のシーンがその顕著な例だろう。ゴールには結びつかなかったが、パスコースが無く最終ラインで行き詰っていた状況を、自身のタイミングの良い裏抜けで打開した。これによってIHの選手は下りることなくなるべく高いポジションを取り続けることができ、ハフェルツに代わって内側に入ってきたサカにはライン間のスペースを与えることができた。

 また、IHとWGがポジションチェンジする際には相手SBとCBの連係が遅れた瞬間を見逃さず空いたスペースに走りこむ動きも見せていた。WGのようにサイドに流れるシーンもあり、タイミングを見計らったスペースを作る動き、スペースに入る動きで”行き詰まりかけた”攻撃を何度も活性化させていた。トロサールが様々なポジションでプレーでき、様々な役割を1人でこなすことができるからこそ成り立つ戦術であると言っても過言ではない。

 勇気ある飛び込みで自らゴールを奪うだけでなく、気の利いたプレーでチャンスメイカーにもなれる。ガブリエウ・ジェズスが負傷離脱中の現在、1トップにはチームの潤滑油となれるこのベルギー産”マルチロール”を起用するべきだ。そう思わずにはいられない圧巻のパフォーマンスだった。

 IHが高い位置を取り続けるこの攻撃の形は、アルテタ監督にとってウーデゴール欠場を受けた苦肉の策だったかもしれない。しかしこの形では、高さがあるライス、ハフェルツがボックス内に飛び込む数が増え、ウーデゴールがIHの時とはまた違った魅力、可能性を感じることができた。ウーデゴールが戻ってきた時にこの形を必ずしも続ける必要は無いが、チームとして攻撃の選択肢を1つ増やすことができたことは今後大いに役立つはずだ。

(文:竹内快)

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