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日本代表 3か月前

【サッカー日本代表批評1】ロングボール苦戦の原因は前線にある。放置されたプレスラインとリーダー不在という問題

シリーズ:サッカー日本代表批評 text by 河岸貴 photo by Shinya Tanaka

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 サッカー日本代表はAFCアジアカップカタール2023でイラン代表に敗れ、ベスト8という結果に終わった。史上最強とも謳われたチームは、イラン代表、イラク代表と中東勢に敗れている。日本代表には何が足りないのか。今回の敗退はそれを掘り下げて考える機会としなければならない。(文:河岸貴)

【プロフィール】河岸貴

1976年7月25日生まれ、石川県出身。金沢大学卒業、同大学大学院修了。ドイツ・シュトゥットガルト在住。06年から指導者修行のためブンデスリーガの名門シュトゥットガルトの育成組織で研鑽を積み、09年から正式な指導者となり、11年1月から13年8月までトップチームに在籍。その後、スカウトと日本プロジェクトのコーディネーターを歴任し、サッカーコンサルティング会社「KIOT CONNECTIONS GbR」を設立。J SPORTSでブンデスリーガ解説、講義・講演活動、指導者講習会などを開催。21年から23年まで『フットボール批評』で「現代サッカーの教科書」を連載し、23年11月に著書「サッカー『BoS理論』 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法」を上梓。ドイツサッカー協会B級指導者ライセンス、日本サッカー協会A級指導者ライセンスを保持。


サッカーという競技が何なのか。もう一度、認識した方がいい

サッカー日本代表でキャプテンを務める遠藤航
【写真:田中伸弥】

 茫然自失。中継映像で選手の表情が抜かれましたが、まるで気が入っていないように見えました。気が入っていないというより、気の入れようがない、どうしたらよいかわからないという迷子のような……。2失点目はまさにそのような心理から生まれた連携ミスと言えるでしょう。一方でイラン代表の選手たちの一心不乱、鬼気迫るものに比べると、それは明らかでした。サッカーは格闘技であることをもう一度、認識した方がいい。ドイツ代表もそうですが、サッカーは戦うものであるということを忘れているようでした。

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 もちろん、日本代表の選手たちは100%の意気込みでこの大会に臨んでいたでしょう。ただ、その100%を大きく上回っていたのが、イラン代表の選手たちであり、イラク代表の選手たちでした。ほぼ国内組で構成された20年前の日本代表もそうだったのかもしれませんが、この大会で活躍して中東のビッグクラブやヨーロッパのクラブにステップアップしたいと、この大会に選手生活をかけている選手もいたでしょう。そういった避けられない置かれた環境の違いが、この大会にかける思いの差として現れたのかもしれません。

 日本代表の選手たちの多くは、欧州トップレベルのクラブでやっています。選手のクオリティでは絶対にイラン代表より高いはず。それにもかかわらず敗れたという結果の背景を考えるためには、タクティック(戦術)的な部分の前に、メンタル的そして組織的な要素について改めて考えなければいけません。

 なぜ日本代表が前回のFIFAワールドカップでドイツ代表やスペイン代表に勝てたのか。もちろん選手のクオリティがあることは前提で、10回やれば2回、3回は勝てるだけのクオリティはあるかもしれない。1回かもしれないけど、ゼロじゃないんです。そういったチャレンジャーのような状況だと背負うものがないので強い。

 また、日本代表の選手たちが所属するクラブでやっている同僚たちは皆メンタルお化けです。パーソナルが強い選手たちばかりの中で、日本人が淡々とプレーすることでチームが熱くなりすぎることなく、潤滑油的な役割を担うことができるでしょう。ビッグクラブという船の一船員として優秀な漕ぎ手ではありますが、船頭としてチームを引っ張ることができる選手が日本代表にどれだけいたのかは疑問です。

 長谷部誠選手や長友佑都選手のようなパーソナルを持った選手は今回いたのでしょうか。そういった意味で、キャプテンである遠藤航選手の振る舞いには少しばかり疑問を抱きました。

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