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【遠藤航・分析コラム】「次なるフェーズへ」リバプールでも際立つ「予測力」。“世界最高峰のMF”としての課題は…

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

試合を支配する上で重要となった遠藤航の特長


 ブレントフォードは相手が強くなればなるほど、最終ラインから丁寧に中盤を経由したビルドアップをやらない。早いタイミングでターゲットとなるFWアイバン・トニーのロングボールを当てて前線に起点を作り、そこから縦に速く相手ゴールに攻めるのが得意な攻撃の形だ。

 今季前半戦を賭博規則違反により出場停止処分を受けていたイングランド代表FWは、昨季プレミアリーグの全FWで最も空中戦で勝利するなど、ポストプレーに定評がある選手だ。リバプールとしては彼のところで起点を作らせない守備が求められていた。

 その中で遠藤は大きな役割を果たしている。トニーにボールを収められたシーンもあったが、試合を通して空中戦で後手を踏まなかった。日本代表MFは相手選手よりも落下地点に入るのが早いケースが多く、「予測」に基づき、先手を打つことで上背不足を補っている。

 この試合で遠藤は相手のロングボールに対してヘディングで対応することが多かったが、データサイト『Sofa Score』によると空中戦自体は3戦2勝と数が少ない。これは彼が素早く落下地点に入ることで、相手と競る前にボールを弾き返せていることを裏付けるデータとも言えるだろう。

 相手と空中で競り合わなければ、ヘディングでのパスの精度も上がる。この試合を通して遠藤は狙った場所へ頭でのパスを出せるケースが多く、その代表例が55分の追加点の起点となったプレーだろう。この場面でも彼は真っ先に落下地点に入っており、ブレントフォードFWニール・モペイと競り合うことなくヘディングで味方選手にパスを出していた。

 相手FWよりも先回りする守備のおかげで、空中でのボール回収の確率が上がり、その後のプレー精度も上がる。仮に空中戦で後手を踏んでしまうと、相手に狙われ続けて、苦戦を強いられる可能性もあった。それをさせない彼の経験に基づく「予測」を駆使したプレーは、試合を支配する上で欠かせない要素だった。

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