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セリエA 1か月前

チアゴ・モッタだけじゃない。ボローニャ大躍進を支える1人の“老人”。ミラクルを起こし続ける男は何者なのか【コラム】

シリーズ:コラム text by 佐藤徳和 photo by Getty Images

今季も当たる補強の数々



 SDと指揮官の間に確執はあったものの、18/19シーズンからはセリエAで3季連続3位、19/20シーズンのCLでは8強。今後何年も語り継がれる武勲である。サルトーリは、ガスペリー二との関係については「一つだけ言えることは、2人の性格は異なっていたが、お互いがアタランタの成功ために断固として働いたということだ」とだけ述べ、多くを語っていない。アタランタの快進撃も、戦術家ガスペリーニによる手腕に依るところが大きいことは間違いないが、無名だったマルテン・デ・ローン、ベラト・ジムシティ、ハンス・ハテブール、ルスラン・マリノフスキー(現ジェノア)、フランク・ケシエ(現アル・アハリ)らを世界中からかき集め、チームを構築したのが、サルトーリであることも忘れてはならない。

 アタランタのSDを辞任したサルトーリには、ビッグクラブからの誘いもあったが、新たに選択したのは、ボローニャだった。サルトーリがアタランタに在籍した期間、欧州カップ戦の出場や勝ち抜きにより、クラブは1億6400万ユーロ(約230億円)の賞金を得ていた。一方、ボローニャはその間、1億1200万ユーロ(約157億円)の損失を記録。収支を安定化させることがサルトーリに課されたミッションでもある。

 ザークツィーには、850万ユーロ(約12億円)を投じたが、ルイス・ファーガソンは、200万ユーロ(約2.8億円)、リッカルド・カラフィオーリは150万ユーロ(約2.1億円)と今日の市場価値では信じられないような安い移籍金でオペレーションを遂行した。すでに、彼らの市場価値は、桁一つ多い数字に膨れ上がっている。

 安く購入した選手を高額で売り捌くやり方が定着すれば、今後はクラブの財政が安定していくことだろう。さらには、欧州カップ戦の出場権を得られれば、賞金も得ることができる。それがCLとなれば、膨大な額の収入が見込まれる。今夏のメルカートで主力の引き止めは容易ではないと見られるが、懐に入り込む大金を考えれば、クラブにとって悲観することではない。

 T・モッタ監督には、ユベントスとマンチェスター・Uからの関心が強まっている。選手だけでなく、指揮官までも引き抜かれることになれば、この夏のボローニャは、“草刈り場”となり、弱体化も懸念される。だが、ここからがサルトーリの腕の見せ所だ。どんな選手を獲得し、どんな指揮官を招へいして、チームを再建するのか。今から楽しみでならない。

(文:佐藤徳和)

【了】

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