津久井の目指すべき場所。「僕は子どものころから…」
「僕はJFLでもプレーしてきたし、当時から常に上のステージを意識し続けてきた。順調にJ3、そしてJ2ときているけど、もちろんここはゴール地点ではないし、どんどん上を目指す気持ちがないと成長にもつながらない。そこは自分の気持ち次第でどうにでもなるので、満足せずに一日一日を大切にしていきたい」
スターになるオーラすらすでに見え隠れする逸材が、期待通りに大活躍を演じている。津久井の姿に目を細めながら、水戸の小島耕社長は「ウチに長くいる選手じゃないですね」と意外な言葉を口にした。
「すぐにJ1、海外、日本代表に羽ばたいていけるし、さらにはワールドカップ(W杯)でスコアラーにもなれる選手だと思っている。彼のような若手選手が、J2やJ3のクラブにはそれこそ大勢いる。そういった選手に対してわれわれのようなクラブができるのは、活躍する場を与えることだと思っています」
自身の能力をこれでもかと解き放った山形戦で、対面の山田が自分を嫌がっていると津久井は感じていた。結局、山田は69分にベンチへ下がっている。その後は左へ配置転換した森直樹監督のさい配に、津久井は「信頼してもらえている、という意味でうれしい」と喜びながら、さらなるテーマを自らに課す。
「最後のほうは体もきつかったけど、右でも左でももっともっと自分の持ち味を出していきたい。感覚はどんどんあがっているし、ピッチで体現する自分の姿を意識してこれからも練習に取り組んでいきたい。僕は子どものころからプレミアリーグでプレーする夢があるので、そこへ向けてどんどん成長していきたい」
原口の攻撃的なスタイルに憧れ、マリノスで華やかなスポットライトと挫折を味わい、沼津で“ゴン中山”の薫陶を色濃く受ける。波瀾万丈に富んだキャリアを、自らの意思ではい上がってきた津久井はかつてのフォワードから、ホームでの初陣でファン・サポーターのハートを射抜いた水戸でサイズ、パワー、推進力、そして決定力を融合させた、日本サッカー界でも稀有なサイドアタッカーへと変貌を遂げつつある。
(取材・文:藤江直人)
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