久保の本意が垣間見える。短く、そして、力強い一言
11人がオートマチックに連動して同じ絵を描く柏で、久保は少しずつ自身のカラーの濃度を上げていく。第8節・京都サンガF.C.戦では「ボールを落としてもらったときからシュートを打つと決めていました」と垣田裕暉の落としから強烈な一発を射抜いて、今季2点目をゲット。
第10節のFC東京戦でも右や中央へと顔を出してゴールを強襲し、第12節のアルビレックス新潟戦では小泉の右への動き出しをおとりに使って山田雄士にクサビを差し込み、渡井理己のゴールの起点となった。
ただ、この試合では43分にゴール前での決定機を枠に収められず。徐々に “らしさ” をピッチで表現できているなかで、決め切る部分は現在の課題として挙げられる。第16節・ファジアーノ岡山戦の51分にも、前述した鹿島戦のように味方のシュートタイミングで前へと矢印を向けてこぼれ球に誰よりも早く反応したが、GKスベンド・ブローダーセンに阻まれた。
久保は新潟戦後に「数字は一番大事です」と言い切った。短いながらも募らせた悔しさと、内なる闘志を感じさせる言葉だった。普段は冷静に落ち着いた様子で取材に対応してくれるが、そのなかでも彼の言葉の節々には熱量や向上心を感じさせる。
誤解を恐れずに言えば、おそらくこの言葉こそが本意なのだろう。右WBでポジションを争う大卒ルーキーの中島舜からも「トウジ君(久保)は本当にすごいです。(プレーについて)話を聞いたら優しく教えてくれたりもします」と一目置かれており、トレーニングから高い理想像を追い求め、燃えたぎる熱意をもってピッチで表現している。
14日に敵地へと乗り込んだ横浜F・マリノス戦では、27分にフリーでシュートを放つと、80分にはボックス内へ進入して右足を振り抜くなど再三の得点機に絡んだが、自身のゴールはゼロ。それでも、後半アディショナルタイムに木下康介の貴重な追加点をアシストした。
今季3つ目のゴールは取れずとも、2つ目のアシストを記録。得点に絡んだこの日の自身の出来について問えば、「点を取れるチャンスがたくさんあったので、1アシストは赤点回避くらいですかね」とやはり厳しい言葉で締めくくった。
チームに植えつけられた新たな根幹のもと、柏に歓喜をもたらす存在へ—— 。開幕当初から内なる闘志を燃やし続けた26歳が、理想像の実現に向けて “我” にもフォーカスを当てている。
(取材・文:藤井圭)
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