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Jリーグ 1週間前

長谷部茂利監督の優秀さがわかる。川崎フロンターレ、最も大きな変化は「拒否反応」の有無【戦術分析コラム(1)】

text by 編集部 photo by Getty Images

川崎フロンターレ流[4-4-2]プレッシングのメカニズム

 川崎フロンターレの[4-4-2]はミドルプレッシングで開始することが多い。プレッシングのきっかけとなる1列目のコンビは、背中で相手の中盤を消すことから始め、センターバック同士のパス交換やサイドバックからセンターバックへのバックパスを合図にプレッシングのスイッチといれることを習慣としている。

 チーム全体でプレッシングのスイッチを入れるタイミングも共有されているため、前線だけが守備の奔走し、簡単にビルドアップの出口を相手に与えるような連動性のなさはほとんど見られない。

 問題があるとすれば、[4-4-2]あるあるの配置が噛み合わないときだろう。Jリーグで増えている[3-4-2-1]を相手にすると、相手の3バックに対してどのようにプレッシングに行くかで[4-4-2]のチームは微調整が必要になることが多い。例えば、相手のパスをスイッチに2トップのままで相手の3バックを追いかけるのか、サイドハーフを前に出して、数を合わせるのかの問題だ。

 マルシーニョや家長が相手のビルドアップ隊までプレッシングに出かけていくならば、相手のウイングバックを抑えるためにサイドバックが縦に長い距離をタイミングよく移動する必要が出てくる。

 このスライドは現代サッカーでは当たり前の光景になりつつあるが、タイミングを逃すと、相手がオープンな形でボールを持つ状況になってしまう。リードしていれば、撤退して[4-4-2]で構えればいいので大きな問題にはならない。相手の攻撃の選択肢を減らし、効果的に前進させない目的のプレッシングを相手陣地から行うとすれば、多少のリスクを背負うことになるという話である。

 また、Jリーグあるあるになってきているが、ウイングバックがボールを持ったときに相手のサイドバックがスライドしてきたら、ダイレクトに前線に蹴り込むことで、相手のセンターバックとのマンツーマン大会が開催される。これに川崎も参加してしまうことが多い。ただし、高井幸大が抜群の強さを見せつけるので、大きな問題にはなっていない。

 丸山祐市サイドから攻撃をしたほうが効率は良い気がする。その場合は高井がゴール前に残る構造になるので、高井をゴール前から動かすことを優先しているのかもしれないし、マルシーニョのほうが曖昧な立ち位置で相手の攻撃を牽制することが上手なのかもしれない。

 長谷部監督以降の川崎における、もっとも大きな変化は、相手にボールを持たせることに拒否反応が出なくなったことだろう。

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