家長昭博“出張”のメリットとデメリット
ゴール前にいっても立ち位置の原則に忠実である。ピッチを見渡せば、相手の間で待っている選手が多い。幅を取っている選手、相手の間にいる選手、深さを取っている選手、相手の脇でボール保持を円滑に進めようとする選手と、それぞれの立ち位置の役割は多彩だが、誰がどこにいるかは一定のようで一定ではない。
川崎の選手は個々の能力が高いので、誰がどこにいても機能性は失わないという計算があるのかもしれない。左サイドバックの佐々木旭がカットインしてシュートを放った場面ではもうなんでもありだなといい意味で呆れたことを覚えている。
このルールのもとに動いているので、いろいろな意見が渦巻いている家長の逆サイドへの出張ですらバランスのなかで行われているようにも見える。だからこそ、長谷部茂利監督も家長の出張を止めていないのかもしれない。
もちろん、ときどきは家長の出張で右サイドにサイドチェンジしてもあまり効果的でないなどのデメリットも訪れるが、相手に出張してきた家長をどうするかを迫ることもできるし、ボール保持が落ち着くメリットも考えれば、バグを少なくすれば、家長の出張はチームの幅として利用可能という計算は理解できる。
一方でシンプルなウイングにボールを預けてからのドリブル突破、ウイングを追い越すサイドバックの攻撃参加と、サッカー界で古くから存在している伝家の宝刀も装備されているところがにくい。AFCチャンピオンズリーグエリート後に試合にでている佐々木とファンウェルメスケルケン際のサイドバックコンビは内側でも外側でも平気でプレーし、さらにウイングを助ける献身性も備わっているので鬼に金棒状態となる。
家長とともに異質な動きをしているのが脇坂だ。まるで仙人のようである。
