相手のメンタルを削ぐ渡井理己のゴール「正直、コースが…」
「あと2失点しなければいいというメンタリティーではなく、後半は、この試合に勝ち切るというイメージを強く意識しました」
すると50分、柏が右から左へ、左から右へと揺さぶり同点に追いつく。右サイドライン際を小泉佳穂が抜けてボールを受けると、中央の垣田に預ける。再び小泉が持ち、逆サイドに流すと、小屋松知哉がボールを跨ぎ、三丸拡がゴール前にクロスを送る。そのセカンドボールを拾った渡井が、考えるよりも早く身体が反応し右足で綺麗に収め、流れるような動作でスムーズに左足を鋭く振り抜いた。
「前半からボールを動かし、フィニッシュまでいけましたが、パスの精度やクロスの入りなど、ぼやっとしていた部分もありました。あのシーンはボックス内に5人ぐらい入れていました。それぞれが大事な立ち位置に立てていたことで自分のところに落ちてきたと思いますし、日頃の練習で取り組んでいたシーンでもあると感じています」
渡井は得点シーンをそう振り返った。さらに「トラップが決まった時点で、とにかく枠に入れようと。正直、コースが見えていたわけではなく、枠に入れば何かが起きると思っていました」と続けた。
この1点は、ただの1点ではなかった。ここからさらに追い上げようと意気込むヴェルディのメンタルを削ぐには、十分なものとなっていたはずだ。
なおも柏は相手ゴールに矢印を向ける。ボールの動かしも速く、ショートパスだけでなく、効果的なロングパスを織り交ぜると、71分には自陣のセンターサークル付近でボールを奪った中川が、そのまま約50メートル近くをドリブルで運び、柔らかいクロスを上げると、ファーに陣取っていた垣田が頭で合わせて逆転に成功。シーズン序盤は複数得点で終える試合が少ないことが課題となっていたが、それも改善傾向にある。
渡井は、その要因について次のように言う。