勝利のために。三竿健斗が見せたずる賢さ
4月6日、京都サンガF.C.をまだ名前が変わる前のホームスタジアムに迎え入れた試合だった。鹿島は立ち上がりから主導権を握り、レオ・セアラの2得点で幸先よく先制し、ハーフタイムを迎えていた。
しかし、後半は状況が一変。攻勢に出る京都の勢いを止められず、82分までに2点差をひっくり返された。92分に3-3と同点に追いつくが、95分にラファエル・エリアスにこの日3点目を決められてゲームオーバーとなった。
約1年半ぶりにホームで敗れた苦い記憶だった。その試合の二の舞だけは避けたかったはずだ。最終的には相手のミスによって得た決定機を松村が仕留める形になったが、そこに至るまでにやられそうな場面はあった。それを水際で防ぎ、数字に残らないプレーで流れを渡さなかった。
「ずる賢くやるっていうだけです」と語る三竿は戦う術を熟知している。もちろん非紳士的なふるまいのそれではなく、ルールの中でどう流れをチームに引き寄せられるかという話である。
後半立ち上がりに小池龍太が相手と接触して左膝を負傷した。
小池はピッチ外へと倒れ込んでしまったため、木村博之主審は競技規則に則りプレーを続行させた。鹿島ベンチは試合を止めろと抗議したが、もちろん、1点を追う柏の選手たちにもプレーを止める義務はない。
プレーが切れたとたん、三竿がピッチに座り込んだ。後方の修復時間を確保し、水分補給の機会を与え、相手の流れを断ち切るための“ずる賢い”プレーだった。