「やはり自分に責任がある」
前半アディショナルタイムにマテウスに決められた追加点をさかのぼっていけば、自陣の右サイドにおけるボールロストに行き着く。まずはこぼれ球を拾ったマリノスの井上健太が、縦へのドリブルを仕掛けた。しかし、最初のボールタッチが長くなってしまい、すかさず対面にいた森が反応した。
この場面で選択したのは、左足によるワンタッチパス。しかし、ターゲットにすえた稲垣祥へのパスが、ほんのわずかだけ左へずれしまう。必死に体勢を立て直した稲垣が懸命に伸ばした右足をかすめ、こぼれたボールを奪い返した井上が、名古屋ゴールへ向かってドリブルを開始してカウンターを発動させた。
「翔くん(稲垣)の奥の選手もちょっと見ていたんですけど、そこでパスが合わなかった、というところで失点してしまった。やはり自分に責任があると思うので、そこはしっかり振り返らないといけない」
再び自らを責めた森は、ボールロストからわずか7秒後に喫した失点を悔やみながら、同時に刺激へと変えている。井上からパスを受けたマテウスは、シュートコースを野上にふさがれながらも巧みなフェイントでマーカーの体勢を崩し、わずかな隙を見逃さずにその股間を射抜くシュートをゴール右隅へ流し込んだ。
先の東アジアE-1サッカー選手権2025決勝大会 韓国を制したサッカー日本代表に招集され、ホンコン・チャイナ代表戦でデビューを果たしたGKピサノ・アレックス幸冬堀尾が一歩も動けなかった技ありの一撃。自分がマテウスと対峙する場面が訪れれば必ず食い止めてみせる、という誓いを込めながら、森はこんな言葉を続けている。