井上健太が苦しんだ日々を乗り越えられた理由「いや、もう…」
ピッチでプレーしたのは62分。そのあとも井上は戦い続けた。ピッチの戦況をつぶさに見ながら、試合が止まると一目散に駆け出し、ピッチ内のチームメートに水を渡す。走って駆け寄ろうとする選手にはアンダースローで投げ渡した。
試合後にはチームメートと喜びを共有した。ジャン・クルードや鈴木冬一とお互いに同じ手の動きを繰り返すハンドシェイクで健闘を称え合うと、宮市亮には談笑のあとに頭を軽くこづかれる。その際の宮市の表情は、実に楽しそうだった。
もちろん、課題も感じている。
「潜っていくことは自分の特徴だと思うし、その出しやすさは真ん中の方があるので、もっと出したかったです。谷村選手との関係性も、もっと作りたかったです」
それでも、先につながりそうな感覚を得ているのも確かだ。
「チームの戦い方がはっきりしてきました。その中で自分の特徴を出していきたいです」
苦しんだ日々を経て、どうしてチームの勝利に貢献できるまで復活できたのか?
そう問われた井上は、やはり一言で返している。
「いや、もう、気持ちっす」
繰り返しになったその言葉にこそが、井上らしさが戻ってきたことを感じさせた。
(取材・文:菊地正典)
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