練習を外されたこともある「今思えば、そういった1つ1つの行動が…」

「性格もハッキリしていて、自分のポリシーを曲げない人でした。誰よりも勝ちにこだわり、そのための戦術変更も惜しまなかった。モリさんは僕にすごく期待してくれていましたし、調子に乗っていた時は、練習から外されたこともありました。でも今思えば、そういった1つ1つの行動が、プロで上に行くために必要なことだったなと感じています。モリさんが本当に大好きだったし、感謝しかありません。これから結果を残して恩返ししていきたいと思っています」

　森下氏は常々「上手くてたくましい選手を育てたい」と語っていた。西野の才能を高く評価し、高校2年生でのトップ昇格、クラブ史上最年少でのリーグ出場の際には喜び、高校3年生で再びユースに再登録された時も「奨太がいるだけでチームが変わるね」と誇らしげに語っていた。

　この1年で、西野の身体も、紡ぐ言葉も、確かな変化を見せ、まさに“たくましい選手”へと進化し始めている。札幌の今シーズンを占う、サガン鳥栖とＶ・ファーレン長崎との大一番が迫る中、西野は、恩師も拘ったチームの勝利だけを求め、死力を尽くす。クラブに関わるすべての人の想いをその背に受けて、札幌をもう1度J1の舞台へと導くために。

　そして、先人たちが築きあげてきた、その胸のエンブレムの誇りと重みを、西野が確かに受け継いでいることを、ここから証明してくれるはずだ。

（取材・文：黒川広人）

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