「あの瞬間だけは一歩、自分が上回れた」
「ヴェルディの時はクロスに合わせる形がなかなかなくて、そこが自分が課題だと思って向き合い続けていた。名古屋に来てから、結構タテに速いですし、クロスの回数も多いんで、動き出しはすごく考えながらやっていました。
あの場面は最初、謙佑君が抜けた時に左足で上げるかなと思ってニアに走ったんですけど切り替えしたんで、動き直して(深澤)大輝君の背後でいいポジションを取れればと入ったらいいボールが来た。決められればよかったですけど、マテ(ウス)はやっぱりうまいですね。僕にしてみれば、先週まで一緒にやってたんで、紅白戦のようなノリ。あの瞬間だけは一歩、自分が上回れたんじゃないかと思います」と木村は直近まで共闘していた面々の特徴を見極めながら、ワンチャンスを生かしたことを明かす。
この1点に助けられ、1−1で折り返した名古屋。長谷川健太監督は後半に入ってギアを上げるべく、中山克広や椎橋慧也ら持ち駒を次々と投入していった。だが、69分、先発していたシュミット・ダニエルが自ら左足を抑えて交代を要求。ピサノ・アレックス幸冬堀尾を出す羽目になってしまった。
予期せぬアクシデントが起き、チーム全体に衝撃が走ったが、選手たちは動じることなく前へ前へという姿勢を示し続ける。そして80分、椎橋が大きく右に展開したボールに追いついた森島司がペナルティエリア内で相手左WB松橋優安と交錯。PKをゲットし、稲垣祥が確実にゴール。この一発が決勝点となり、名古屋は2−1で逆転勝利。鬼門で10年ぶりの白星を手中にし、ベスト8進出を決めたのである。
木村にとっても、新天地初の先発フル出場で勝利に貢献。安堵感を覚えた様子だった。