
早くJ1で見たい!J2で注目を集める監督たち【写真:Getty Images】
2026/27シーズンの明治安田J2リーグは開幕からまだ数節だが、J1昇格を懸けた長丁場の戦いがすでに進行中。指揮官の采配ひとつでチームの状況は大きく変わり、一挙手一投足が勝敗を分ける。本稿では、J2で戦うチームに著しい成果をもたらす指揮官を5名紹介する。[1/5ページ]
槙野智章(まきの・ともあき)

藤枝MYFCの槙野智章監督【写真:Getty Images】
生年月日:1987年5月11日
所属クラブ:藤枝MYFC
2026/27シーズンJ2リーグ成績:3勝1敗
【着実に歩んだ指導者への道】
指導者としての槙野智章を語るうえで重要なのは、着実に経験を積みながら、早いペースで次の段階へ進んできた点である。
2022シーズンをもって現役を引退した後、2023年2月に品川CCのテクニカルアドバイザーに就任し、神奈川県2部の品川CCセカンドでは監督として指揮を執った。
2024シーズンにはトップチームの監督に就任。浦和レッズ在籍時にCライセンス(旧C級)から取得し、指導者の階段を昇り始めた。引退後はAジェネラルを受講したうえで、2025年度のProライセンスコーチ養成講習会に参加した。
2025年12月8日にはJFA Proライセンス(旧:S級ライセンス)を取得し、その4日後の12月12日、藤枝MYFCの監督就任が発表された。
就任会見では自作のプレゼン資料を用い、戦術面のテーマとして「UBAU」を提示した。これは「ボールを奪う、ゴールを奪う、勝点を奪う、ファンのハートを奪う」という4つの能動性を示す言葉である(参照:藤枝MYFC公式YouTubeチャンネル)。
また、槙野監督はサッカーを「究極のエンターテインメント」と位置づけ、予測不能で見ていて楽しい攻撃を志向する姿勢を明確にした。その中で、「ミラージオ(Mirageo)」という造語を用いて目指すべきスタイルを説明する。
「Mirage」(迷彩)、「Neo」(新時代)、「Go」(行く)を組み合わせた概念は、相手にとって予測不能な“変幻自在”のフットボールスタイルを意味するという。新生・藤枝MYFCのチーム戦術について語られたのが、J2・J3百年構想リーグ開幕前の2025年12月15日のことだった。

藤枝MYFCを鼓舞するサポーターたち【写真:Getty Images】
【“奇策”と粘り強さで躍進】
同リーグでは総合19位に終わったものの、1対1勝利数「383」でJ2クラブの中で3位の記録を残している。まさに「UBAU」の前段階である部分では強さを見せられたということだ。3月7日のジュビロ磐田戦を1-1からのPK戦で制しているが、チームの粘り強さが最も顕著だったと言って差し支えないだろう。
序盤から両チームの球際の強さが目立っていたが、前半終了間際に菊井悠介が連続でイエローカードをもらって退場すると、状況は一変。後半はひたすら押し込まれ、シュートを23本も浴びた。それでも1失点で抑えられたのは、10人の鬼気迫るプレーがあったからだ。
そして2026/27シーズンの明治安田J2リーグでは、8月8日の開幕節でベガルタ仙台を2-0で下した。仙台の森山佳郎監督は、槙野監督にとって広島ユース時代の恩師であり、両者にとってプロチームの監督として初対決だった。この試合では、ベンチからイラストで伝えたコーナーキックのサインが2得点につながった。
続く8月15日のいわきFC戦も3-1で制し、藤枝は開幕2連勝を飾った。後半には「蟻地獄」のボードサインを用いたセットプレーから、いわきのオウンゴールを誘発。田村雄三監督も試合後、対策していた形から失点したことについて「まだまだ隙がある」と認めた。
いわき戦はシュート本数で相手に上回られており、支配率でも後手を踏んだ。しかし奇策と持ち前の粘り強さで2点差の快勝に繋げた。8月26日に行われた天皇杯の2回戦・モンテディオ山形戦でもコーナーキックのサインプレーから得点をあげており、セットプレーはJ2を見渡しても屈指のクオリティであると言えるだろう。
バリエーションに際限なく提示されるサイン。手を変え品を変え得点を奪おうとする姿勢は文字通り予測不能だ。百年構想リーグでまかれた種が、新シーズンでいよいよ花開こうとしている。