直前の交代キャンセル。その真相は…
明治安田J1リーグ第27節、FC東京対京都サンガF.C.が24日に行われ、0-4で京都が勝利した。前半だけで京都は3点を奪い、3点差をつけて試合は終盤へと入っていったが、ボールを握り続けるFC東京にいつゴールネットを揺らされてもおかしくない状況が続いていた。そんな中、ベンチは慌ただしく交代カードの準備を進めていた。
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特に前半はFC東京の左サイドから崩されるシーンが多く、京都のウイングが最終ラインに吸収されるほど押し込まれていた。
ハーフタイムを挟んで京都は立ち位置を整理し、前から圧力をかける場面と引いて守る場面の使い分けができるようになったが、試合開始時点で32度に迫ろうかという酷暑の味の素スタジアムで走り続けた代償は小さくなく、いつ足が止まってもおかしくないくらい選手たちは疲弊していたはずだ。
曺貴裁監督は終盤へと突入した試合の状況を見ながら対策を考えていた。60分を過ぎたころ、ウォーミングアップをしていたアピアタウィア久を呼んだ。右センターバックで先発していた宮本優太の状態を考慮し、交替の準備を進めていた。
それから間もなく、京都は3枚替えをスタンバイ。中野瑠馬、須貝英大、アピアタウィアの3人がピッチ脇に並んだところで、飲水タイムに入った。
しかし、このとき、宮本にはまだできるという感覚があった。
「僕としては大丈夫だったので言いました。他にも足がつっている選手がいたので、自分はもう1回ムチ打ってやらなきゃと思いました。そこは自分に厳しくやるから出させてくれと発言しました」
曺監督は直前でアピアタウィアの投入をやめた。
宮本と曺監督は流通経済大学のときからの間柄だが、単なる選手と指導者に留まらない、深い信頼関係が垣間見える。
「僕が曺さんをリスペクトできるのは、あれだけの色々な経験をしていて、ルヴァンカップ優勝もしているのに、人に対して物事を上から言わない。僕に対してもそうですし、他の選手にも同じ目線で寄り添ってくれる」
そんな関係性があるからこそ、宮本はまだいけると正直な思いを伝えた。曺監督もそれを信じ、思いをくみ取って交代を取りやめた。
結果的にその後に京都は4点目を奪い、スコアとしては余裕を持った勝利だったが、体力の消耗を考えれば簡単な試合ではなかった。「あのとき3枚替えていると、残り1人しか使えなくなっちゃう」と曺監督が言うように、交替取り消しはその後の采配に小さくない影響を与えた。
京都はアウェイでFC東京にリーグ戦初翔。これで首位に立ち、今季初の3連勝を飾った。強さの理由の一端を担うのは、選手も忌憚なく自分の意思を伝えられる環境だ。
(取材・文:加藤健一)
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